あなたが毎年払っている「採用費」は、本当はもらえるお金かもしれません。《部長/MDコラム》
2026.09.25
あなたが毎年払っている「採用費」は、
本当はもらえるお金かもしれません。《部長/MDコラム》
株式会社 船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング
HRビジネスコンサルティング部
マネージング・ディレクター 大村 在龍
店舗なし。在庫なし。加盟金なし。営業利益率30%。最短90日で黒字化。
お世話になっております。船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングの大村です。
本題に入る前に、少しだけ最近の話をさせてください。
先日、人材ビジネスの最前線を走る先進企業2社を、お客様とともに訪問してきました。視察を兼ねたセミナーも開催し、私自身、非常に多くの学びを得ました。
その中で、強く印象に残った言葉があります。
■「もう、人を右から左へ流すだけのビジネスは成立しない」
1社目で伺ったのは、教育と人材紹介を融合させたモデルでした。
紹介する前に徹底した研修を行い、入社後も1年間、複数回にわたって支援を続ける。
その結果、定着率は98.6%に達しています。
採用のゴールを「入社」ではなく「定着・活躍」に置き換えた——それだけのことなのですが、顧客企業にとっての価値は、まったく別次元になります。
2社目で伺ったのは、AIを事業の中核に据えた会社でした。
社内のノウハウをAIに実装し、レジュメ作成の工数を66%削減。さらに驚いたのは、そこで培ったAI活用ノウハウを、登録している人材に無償で還元していることです。
結果、「この会社から仕事を受けたい」という指名が集まり、広告費を投じなくても人材が集まる構造ができあがっていました。
この2社に共通していたのは、一つの転換です。
「消えていく変動費(広告費)」を、「積み上がる資産(教育とノウハウ)」に置き換えている。
人材ビジネスは今、単なるマッチング業から、人材の価値そのものを高める機関へと進化しつつあります。そしてその変化は、後発で参入する会社にとって、むしろ追い風です。
なぜなら——勝ち筋がすでに言語化されているからです。
■さて、ここからが本題です。
前回のコラムでは、交通誘導警備業という具体的な選択肢を取り上げました。有効求人倍率6.55倍という「構造的な空白」に、後発でも入り込める——というお話です。
ただし、正直に申し上げると、あれは現場を持つ会社に向いた話でした。
「うちは建設でも運送でもない」「現場作業とは縁のない仕事をしている」
——そう感じられた方も、少なくなかったと思います。
そこで今回は、業種をほとんど選ばない、もう一つの選択肢をお話しします。
人材紹介ビジネスです。
そして今日は、あなたの会社がどの型で参入できるのか、3つの選択肢を提示します。最後まで読んでいただければ、「自社ならこれだ」という当たりがつくはずです。
約6分。今回もよろしくお願いいたします。
■まず、身も蓋もない質問をさせてください。
あなたの会社は、年間いくら「採用費」を払っていますか?
求人広告の掲載料。人材紹介会社への手数料。合同説明会の出展費。中小企業でも、年間数百万円は珍しくありません。数千万円という会社もあります。
そして、その多くは——採れても採れなくても、戻ってきません。
求人広告は掲載課金です。載せた時点で費用が確定し、応募がゼロでも返金はない。まさに「掛け捨て」です。
ここで、視点を変えてみてください。
あなたの会社は、すでに「人を集めるためにお金を払う側」にいます。そのために媒体を選び、原稿を書き、面接をし、見送りの連絡もしている。
——それは、人材紹介会社がやっていることと、ほとんど同じです。
違いは一つだけ。
人材紹介会社は、その一連の活動で「お金をもらっている」。あなたの会社は、同じことをして「お金を払っている」。
この非対称が、今日のコラムの出発点です。
■市場は、20年で約9倍に膨らみました。
数字で確認しましょう。
厚生労働省『職業紹介事業報告書の集計結果』によれば、有料職業紹介事業の手数料収入は——
2000年:867億円2007年:2,771億円2012年:2,341億円2022年:7,703億円
20年で約9倍。直近10年に限っても、3.29倍に成長しています。
なぜ、ここまで伸びたのか。
理由は明快です。求人広告が「掲載課金の限界」に達したからです。
採用難の時代、載せても採れない。それでも費用は発生する。一方、人材紹介は完全成果報酬型です。採れたときだけ支払えばいい。
企業から見れば、無リスク。だからこそ、企業が最も頼りたいサービスになった。
そしてこの需要の裏付けは、一時的なブームではありません。国難とも言える人手不足そのものです。
Vol.1から一貫してお伝えしてきた通り、生産年齢人口は2020年の7,341万人から、2045年には5,353万人へ——約1,000万人減ります。
この構造が続く限り、人材紹介の需要が縮むことはありません。
■「本業1本足打法」から、”アセットライト”な多角化へ。
ここで、少し経営の話をさせてください。
多くの中小企業は、本業1本足打法です。
設備があり、店舗があり、在庫がある。固定費が重く、損益分岐点が高い。そして——市況が落ちれば、利益が直撃を受ける。
利益が、たった一つの市場の景況感に連動してしまう状態です。
では、どうするか。
設備投資をかけずに立ち上げられる、高収益の事業を第2・第3の柱にする。
本業の固定費はそのままでも、投資の軽い高収益事業を並べることで、全社の損益分岐点が下がり、財務体質そのものが強くなります。
これを「アセットライトな多角化経営」と呼んでいます。
そして人材紹介業は、この条件をほぼ完璧に満たします。
|
実業(固定費型) |
人材紹介 |
|
|---|---|---|
|
初期投資 |
数千万円(設備・内装) |
ほぼ0円(PCと電話) |
|
在庫・仕入れ |
必要(運転資金が寝る) |
不要 |
|
損益分岐点 |
高い |
低い(人件費+広告費のみ) |
|
資金回収 |
数年 |
最短90日で黒字化 |
|
撤退時の損失 |
大きい |
小さい |
この「少人数・低投資・早期回収・高利益率」そのものが、最大のリスクヘッジです。
■売上のほぼ全額が、粗利になる。
収益構造も、驚くほど単純です。
年収300万円の方を1名紹介×手数料30%=売上90万円。
仕入れがないので、この90万円は、ほぼそのまま粗利です。
担当1名が毎月4名を紹介するペースなら、初年度で4,000万円超。売上100に対する費用構成は、人件費40%、広告費20%、その他10%——残る営業利益は30%という構造になります。
重い固定費に苦しむ本業にとって、この利益率は損益分岐点を押し下げるブースターになります。
さらに、追い風があります。AIです。
かつて人材紹介は労働集約型でした。求人票を1件ずつ手作業で作り、面談メモを人が読んで要約し、候補者を目視で選定し、推薦文を毎回ゼロから書く。人数を増やさないと売上が伸びなかった。
それが今、求人原稿の作成も、面談内容の要約も、条件に合う求人の選定も、推薦文の下書きも、AIが担えるようになりました。
弊社のクライアント事例では、ノンコア業務をAIに寄せた結果、月150時間相当の業務が自動化されています。
少人数のまま、売上が伸びる事業に変わったのです。
冒頭でご紹介した視察先の1社も、まさにこの領域で先を走っていました。AIをコスト削減の道具ではなく、事業の付加価値そのものに変えている。後発で参入するなら、最初からその前提で設計できる——これは大きな利点です。
■そして本題です。勝ち方は、3つに集約されます。
ここからが、今日の核心です。
「人材紹介に参入する」と言っても、目的によって、まったく違う設計になります。
未経験から参入して成果を出した中小企業を分析すると、その勝ち方は3つのパターンに集約されました。
ご自身の会社を重ねながら、読み進めてみてください。
【パターン1】業種特化エージェント型──第2の収益柱をつくりたい会社へ
大手と同じ土俵では戦いません。「地域×職種」まで徹底的に絞り込む型です。
実例:株式会社DANDL様(静岡県浜松市)
介護・医療に特化し、個人起業・資本ゼロからスタート。今期売上は1億円、売上総利益率57.4%。静岡県内の介護施設シェアは48%(約1,741/3,627事業所)に達しています。
ランチェスター戦略で地域施設の約半数と契約し、現在は人材紹介に加え、介護職専門の求人メディア・教育研修まで多角展開しています。
オススメの会社:本業の成長が鈍化してきた/新しい収益の柱が欲しい最初に絞る対象:自社が土地勘のある地域×人手不足が深刻な職種
【パターン2】自社採用強化型──本業の採用難を打開したい会社へ
自社の採用難を解決するために参入する型です。集めた母集団のうち、優秀層・自社マッチ層は自社で採用し、それ以外の層を他社へ紹介して収益化します。
冒頭で申し上げた「掛け捨ての採用費」が、利益を生む投資に変わる構造です。
実例:医療法人誠安会様(株式会社エイジエル様)
介護法人グループが、介護専門の人材紹介会社を立ち上げました。結果——
年間採用数:200名超(外部紹介依存から脱却)年間採用コスト:500万円削減離職率:21%→14%以下(自社内製化でミスマッチが減少)
「採用に困っている自分たちだからこそ、現場を理解している」——この当事者性が、そのまま強みになった事例です。
オススメの会社:募集をかけても人が採れない/採用費の流出を止めたい最初に絞る対象:いま最も採用に困っている、自社の職種そのもの
【パターン3】越境人材ビジネス型──自社の経験を展開したい会社へ
自社が先に解決した経験を、同じ課題を持つ企業へ横展開する型です。
実例:株式会社GHK様(岐阜県)
測量・設計業からの異業種参入です。自社で培った特定技能外国人の採用・定着ノウハウを、地域の製造業をはじめとする企業へ横展開。
立ち上げ4年で売上4億円(営業利益率25%を目標)。異業種参入1年で、成約200名を達成しています。
既存事業との相乗効果で人材派遣事業まで拡大し、本業の測量・設計事業まで伸長しました。
オススメの会社:自社で先に解決した経験がある/そのノウハウを資産化したい最初に絞る対象:同じ課題を抱える、地域の人材難企業
■業種も地域も違う3社に、共通していた5つのこと。
浜松の介護特化エージェント、介護法人の採用内製化、岐阜の測量会社。業種も地域も規模も違います。しかし、共通点がありました。
1.未経験から、PCと電話だけで参入している
設備も店舗も持たずに始めた。だから、失敗しても損失が小さい。
2.ターゲットを狭く絞り込んでいる
「地域×職種」まで絞る。大手と同じ土俵で戦わない。
3.確立された「型」を愚直に実行している
自社流にこだわらない。ここが、最も大きな差になっていました。
4.運営が仕組み化されている
「誰がやるか」に依存しない。未経験スタッフでも回る状態をつくる。
5.早期に黒字化し、本業とのシナジーを作っている
単体の収益で終わらせず、採用力・取引先・本業成長に還元している。
前回のVol.5で「新規事業で失敗する会社の共通点」をお伝えしましたが、この5つは、まさにその裏返しです。
■あなたの会社は、どの型で勝ちますか。
整理します。
|
いま、自社が一番したいこと |
選ぶべきパターン |
|---|---|
|
新しい収益の柱を作りたい |
①業種特化エージェント型 |
|
本業の採用を強化したい |
②自社採用強化型 |
|
自社ノウハウを活かしたい |
③越境人材ビジネス型 |
お伝えしたいのは、判断の材料は、すでに社内にあるということです。
本業の課題×地域のネットワーク×既存のノウハウ
この3つを掛け合わせれば、参入すべきパターンは自ずと決まります。ゼロから探す必要はありません。
■ただし、先行者利益には期限があります。
最後に、時間の話を少しだけ。
人材紹介市場は、いま成長期の後半にあります。
成長期のうちは、後発でもポジションが取れます。しかしこれが成熟期に入れば、参入障壁は一気に上がります。
そして今は、3つの条件が同時に揃っている稀なタイミングです。
参入障壁が低い今:成長期のうちは、後発でもポジションが取れるAIの仕組みが整った今:少人数でも回せるので、人を増やさずに立ち上がるWeb集客が整った今:求職者を集める手段が、ルール化・仕組み化されている
この3つが揃っている「今」が、最も低リスクで市場に参入できるタイミングです。
■まずは、自社がどの型に当てはまるかを整理しませんか。
人材紹介業の立ち上げについて、詳しい情報をまとめたページをご用意しています。
事業の全体像、成功のポイント、そして正直にお伝えすべき留意点まで掲載しています。ページ内のフォームから、無料の個別相談にお申し込みいただけます。
▼人材紹介業の立ち上げについて(詳細・無料個別相談)https://www.hc.funaisoken.co.jp/pages/agency-startup
個別相談では、貴社の本業の課題・地域・既存のノウハウをお聞きし、3つの型のどれが最も適しているかを一緒に整理します。
もちろん、「今は参入すべきでない」という結論になることもあります。そのときは、その理由もはっきりお伝えします。
人材紹介は、単なる新規事業ではありません。
アセットライトな多角化によって、財務体質を強くする。収益化と採用強化を、同時に進める。AIとの親和性を活かして、組織全体の生産性を上げる。
つまりこれは、企業価値そのものを高める経営戦略だと、私は考えています。
冒頭でご紹介した視察の帰り道、同行されたお客様がこのように呟かれていました。
「うちも、払う側じゃなくて、もらう側に回れるかもしれない」
まさに、その通りだと思います。
人を採ることに悩み、お金を払い続けてきた経験は、そのまま、人材ビジネスにおける最大の資産になります。
Vol.1でお伝えした「仲間を増やすために、新規事業に参入する」という発想。人材紹介は、その最も直接的な答えの一つです。
次回のコラムも、どうぞお楽しみに。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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