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【役員コラム】組織の定着率向上のポイント:今すぐ始められる「3つのアプローチ」

2026.06.10

 

 

組織の定着率向上のポイント:今すぐ始められる「3つのアプローチ


株式会社 船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング
取締役 執行役員 宮花 宙希

 

こんにちは、船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングの宮花です。

 

前回のコラムでは、人事が良かれと思って導入した施策が、現場にとって「落とし穴」になってしまうリスクや、制度を柔軟に運用することの重要性についてお話ししました。

 
皆様からは、「まさに今、現場の実行コストの高さに頭を悩ませていた」「一律のルールに縛られすぎていたかもしれない」といった、リアリティのあるお声を数多くいただきました。

 
さて、そうした「現場との向き合い方」の延長線上にある、いま多くの組織が最も関心を寄せているテーマが「従業員の定着率向上(リテンション)」です。

 
少子高齢化に伴う労働力不足が深刻化する中、せっかく採用し、育成した優秀な人材が組織を離れてしまうことは、企業にとって計り知れない損失です。

 
採用コストや育成コストの浪費に留まらず、残されたメンバーへの業務負荷の増加、さらには「仲間が辞めていく」ことによる組織全体のモチベーション低下という負のスパイラルを引き起こしかねません。

 
では、組織の定着率を高めるために、私たちは何から手をつけるべきなのでしょうか。今回は、定着率が低下する根本的なメカニズムを紐解きながら、大がかりな制度改革を待たずに「明日から現場で実践できる3つの具体的な施策」を提案します。

 
なぜ、人は組織を去るのか?

定着率向上の施策を考える前に、まず「なぜ人が辞めるのか」という理由を正しく理解する必要があります。

 
多くの退職理由調査において、「キャリアアップのため」「一身上の都合」といった前向き、あるいは無難な理由が表面上は並びます。

 
しかし、その裏にある本音を深く掘り下げていくと、本質的な原因は「職場における『繋がり(エンゲージメント)』の希薄化」に集約されます。

 
・自分の仕事や存在が認められている実感が持てない(承認の不足)

・上司や同僚と本音で話せる関係が築けていない(孤立感)

・日々の業務に追われ、自らの成長や未来のキャリアが見えない(停滞感)

 
これらは、どれだけ立派な福利厚生や高い給与を提示しても、日常のコミュニケーションが機能していなければ根本的な解決にはなりません。つまり、定着率向上の鍵は、人事制度の改定といったマクロなアプローチだけでなく、「日々の職場環境やコミュニケーションの質を変えるマイクロなアプローチ」にあるのです。


すぐに実施できる3つの具体的施策

組織のエンゲージメントを高め、定着率を劇的に向上させるために、今すぐ現場でスタートできる3つの施策を紹介します。

 

① 「1on1ミーティング」の目的を「進捗確認」から「内省・支援」へシフトする

多くの職場で「1on1」はすでに導入されているかと思います。しかし、その実態が「今週の業務の進捗確認」や「トラブルの報告会」になってはいないでしょうか。これでは通常の業務連絡と変わりません。

 
定着率を高めるための1on1の本質は、「メンバーが主役の時間」にすることです。

具体的なアプローチとして、明日からの1on1では以下の「問い」を投げかけてみてください。

 
「今週の業務の中で、一番手応えを感じた(楽しかった)瞬間はどこだった?」

「今、心理的に負担に感じていることや、モヤモヤしていることはない?」

「中長期的にチャレンジしてみたい仕事に向けて、今何かサポートできることはある?」

 
業務の進捗ではなく、本人の「感情」や「キャリアへの意識」にフォーカスすることで、「上司は自分自身の成長や状態に関心を持ってくれている」という安心感が生まれ、組織への帰属意識(エンゲージメント)が飛躍的に高まります。


② サンクスカード・日常の「ピアボーナス」的な称賛文化の仕組み化

人間は誰しも「自分の貢献を認めてほしい」という承認欲求を持っています。しかし、日本企業の多くは「できて当たり前」という減点方式の文化に陥りがちで、加点(称賛)の機会が不足しています。

 
大がかりなシステムを導入しなくても、チャットツール(SlackやTeamsなど)に「#thanks」や「#ありがとう」といった専用チャンネルを1つ作るだけで、今日から始められます。

 
「〇〇さん、資料の数字をチェックしてくれてありがとう!助かりました」

 
「〇〇さんがお客様からのクレームに迅速に対応してくれたおかげで、チームのピンチを乗り切れました」

 
このように、日常の小さな「当たり前」を可視化して褒め合う文化を作ります。周囲からの承認は、金銭的報酬以上に「この組織に自分の居場所がある」という強い定着動機(インセンティブ)になります。

 

③ 入社初期の「孤立」を防ぐ、オンボーディングの「メンター制度」

退職リスクが最も高いのは、皮肉にも「入社直後(新卒・中途問わず)の3ヶ月」です。新しい環境に馴染めず、周囲に気を使って質問もできず、孤独感を深めて「自分はこの組織に合っていないのではないか」と悩んでしまうケースが後を絶ちません。

 
これを取り除くために、業務を教える「教育担当」とは別に、精神的なケアや社内のインフォーマルなルールを教える「メンター」を配置します。

 
◆業務とは直接関係のない、他部署の年齢の近い先輩をアサインする

 
◆「こんな初歩的な質問をしていいのかな」と思うような、社内の暗黙の了解(システムの使い方のコツ、社内の人間関係のハブなど)を気軽に聞ける関係性を作る

 
◆入社1ヶ月間は、週に1回、15分の「雑談タイム」を設ける

 
入社初期の孤独感を解消し、「いつでも味方がいる」という状態を作るだけで、初期の早期離職は劇的に低減します。

 

 
定着率の向上は、一朝一夕には成し遂げられません。

 
しかし、日常のコミュニケーションの「1度の角度の修正」が、1年後、3年後には組織の大きな変化となって現れます。

 
「人が辞めない組織」とは、言い換えれば「誰もが自分の可能性を信じて、安心して挑戦できる組織」です。そんな魅力的な組織を、現場の皆さんと共に、一歩ずつ作っていきましょう。

 

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宮花 宙希

株式会社 船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング 取締役 執行役員

2013年に新卒で船井総合研究所に入社。入社以来、採用・育成・評価・組織開発などのHR分野のコンサルティングに従事。2022年以降、船井総合研究所のHRコンサルティング部門の責任者として活動。2024年よりHR Forceの取締役就任を経て現職。

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