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【塗装業界向け】1on1で管理職育成を推進する方法とポイント

2026.05.14

 

 

本コラム記事では、主に塗装業界の中小企業経営者・幹部・人事担当者向けに、1on1を活用して職人を現場責任者・管理職へ育成し、組織力を高める方法を解説しています。この機会にぜひご覧ください。

 

1. 塗装業界で管理職育成が重要になっている背景

塗装業界において管理職育成が重要になっている背景には、単に現場を任せる人材が不足しているという問題だけではなく、施工品質、工程管理、原価管理、安全管理、顧客対応、若手育成など、経営の成果を左右する重要機能が現場責任者や管理職に集中しているという構造があります。

特に中小規模の塗装会社では、経営者が営業、採用、現場確認、顧客対応、見積り、資金繰り、職人管理まで幅広く担っていることが多く、会社の成長が一定段階に入ると、経営者一人の管理能力だけでは現場全体を支えきれなくなります。

塗装工事は、外壁塗装、屋根塗装、防水、シーリング、下地処理、養生、足場業者との連携、近隣対応、天候判断など、多くの要素が絡み合う仕事であり、現場責任者の判断力によって工期や品質が大きく変わります。

そのため、優秀な職人を育てるだけでは不十分であり、職人をまとめ、現場を動かし、若手を育て、顧客との信頼関係を守れる管理職を育てることが、塗装会社の持続的な成長に欠かせません。

しかし、多くの塗装会社では、管理職育成が計画的に行われているとは限りません。

現場で技術力の高い職人が、そのまま職長や現場責任者に任命されることは少なくありませんが、技術が高いことと、人を育て、現場を管理し、経営視点で判断できることは別の能力です。

本人が職人として優秀であっても、後輩への教え方、工程の組み方、顧客への説明、協力会社との調整、原価意識、安全配慮、トラブル対応を体系的に学んでいなければ、管理職として十分に機能することは難しくなります。

さらに、管理職候補本人にとっても、役割の変化は大きな負担になります。

これまでは自分の作業品質を高めることが中心だった人材が、ある日から現場全体の進捗、若手の動き、顧客の反応、材料の無駄、工期遅延のリスクまで見なければならなくなるため、支援がないまま任せると「責任だけが増えた」と感じやすくなります。

このような状況を放置すると、管理職候補が育たないだけでなく、優秀な中堅職人の離職にもつながります。

塗装会社が今後も安定して受注を増やし、施工品質を維持し、若手を定着させていくためには、管理職育成を偶然や本人任せにせず、会社として意図的に取り組む必要があります。

その有効な手法の一つが、経営者や幹部が管理職候補と定期的に対話する1on1です。

1on1を活用すれば、管理職候補の悩み、強み、課題、役割認識、将来像を継続的に把握しながら、現場責任者として必要な視点を段階的に育てることができます。

 

2. 中小塗装会社で管理職が育ちにくい理由

中小塗装会社で管理職が育ちにくい理由は、人材の能力不足だけではなく、管理職に必要な役割や能力が会社内で明確に整理されていないことにあります。

多くの塗装会社では、現場で腕の良い職人、社歴の長い職人、社長から信頼されている職人が、自然な流れで現場責任者や職長のような立場を任されます。

この任せ方は、少人数の組織では現実的であり、一定の効果もあります。

しかし、会社が成長し、現場数が増え、若手採用を進め、顧客対応の品質を高めようとする段階では、感覚的な抜擢だけでは限界が出てきます。

管理職に求められる仕事は、単に現場で作業を進めることではありません。

現場全体の工程を把握し、職人の配置を考え、若手に作業を教え、顧客や元請けに説明し、トラブルの初期対応を行い、必要に応じて経営者へ報告する役割が求められます。

さらに、塗装会社の管理職には、職人の気持ちを理解しながら、会社として守るべき品質基準や利益基準を現場に浸透させる役割もあります。

このような役割を担うためには、技術力だけではなく、コミュニケーション力、判断力、育成力、調整力、数字への意識が必要です。

ところが、多くの中小塗装会社では、これらの能力を学ぶ機会が十分に用意されていません。

結果として、管理職候補は現場経験を通じて自力で学ぶしかなくなり、うまくいく人といかない人の差が大きくなります。

また、経営者が管理職候補に対して期待していることを明確に伝えていないことも、管理職が育ちにくい理由の一つです。

経営者は「そろそろ現場を任せたい」「若手を見てほしい」「自分の代わりに判断してほしい」と考えていても、それが本人に具体的な言葉で伝わっていなければ、本人は何を期待されているのか分かりません。

本人からすると、急に責任が増えた、若手の面倒を見る時間が増えた、社長から細かい判断を求められるようになったと感じるだけで、管理職として成長する意欲につながりにくくなります。

さらに、中小塗装会社では、管理職候補がプレイングマネージャーになりすぎる問題もあります。

自分の作業もこなしながら、若手指導、顧客対応、工程管理まで求められるため、本人に過度な負担がかかりやすくなります。

この状態で十分な支援や評価がなければ、管理職候補は「管理職になるほど損をする」と感じる可能性があります。

その結果、会社にとって本来育てたい人材ほど、管理職への昇格を前向きに受け止められなくなります。

中小塗装会社が管理職を育てるためには、まず管理職の役割を明確にし、候補者に期待を伝え、定期的な1on1を通じて段階的に成長を支援することが重要です。

 

3. 職人から管理職へ役割が変わる難しさ

塗装業界における管理職育成の難しさは、職人として成果を出すための能力と、管理職として成果を出すための能力が大きく異なる点にあります。

職人として評価される人材は、丁寧な施工、早い作業、仕上がりの美しさ、道具や材料への理解、現場での粘り強さ、安全意識などを備えています。

これらは塗装会社にとって非常に重要な能力であり、現場品質を支える土台です。

しかし、管理職になると、自分自身の作業品質だけではなく、現場全体の成果に責任を持つ必要があります。

つまり、本人がどれだけ上手に塗れるかだけでなく、若手が安全に作業できているか、工程が遅れていないか、顧客との約束が守られているか、材料の無駄が発生していないか、現場の雰囲気が悪化していないかまで見る必要があります。

この役割変化は、本人にとって大きな意識転換を求めます。

職人時代は、自分が動けば成果を出せたかもしれません。

しかし、管理職になると、自分が動くだけではなく、周囲を動かし、任せ、確認し、育てることが求められます。

ここで多くの管理職候補がつまずくのは、「自分でやった方が早い」という感覚から抜け出せないことです。

たしかに、若手に教えるよりも、自分で作業した方が早く、品質も安定する場面はあります。

しかし、それを続けている限り、若手は育たず、管理職候補本人の負担も減りません。

経営者・幹部が管理職候補に伝えるべきなのは、管理職の仕事は単に現場を早く終わらせることではなく、次に現場を任せられる人材を育てながら、品質と利益を両立させることだという点です。

また、職人から管理職へ役割が変わる際には、人間関係の難しさも生まれます。

これまで同じ立場で働いていた職人に対して、指示を出したり、注意をしたり、改善を求めたりする必要が出てくるため、本人は遠慮や葛藤を抱えることがあります。

特に年上の職人や経験豊富な協力会社に対して、若い現場責任者が指示を出す場面では、心理的な負担が大きくなります。

このような役割変化を本人任せにすると、管理職候補は自信を失いやすくなります。

1on1では、職人から管理職へ移行する中で本人が感じている戸惑いを確認し、どのような場面で判断に迷っているのか、どのような人間関係に難しさを感じているのかを具体的に把握することが大切です。

そのうえで、経営者や幹部が「管理職として期待する行動」を言語化し、現場での実践を振り返る機会を設ければ、管理職候補は段階的に役割を理解しやすくなります。

 

4. 塗装会社に求められる管理職の役割とは

塗装会社に求められる管理職の役割は、現場作業の延長線上にあるものではなく、会社の経営方針を現場に落とし込み、現場の実態を経営側へ伝える橋渡し役として位置づける必要があります。

中小塗装会社では、経営者と現場の距離が近いため、管理職の役割が曖昧になりがちです。

しかし、現場数が増え、社員や協力会社が増え、若手採用を強化していくと、経営者がすべての現場を直接見続けることは難しくなります。

その段階で必要になるのが、経営者の考えを理解し、現場で実行できる管理職です。

塗装会社の管理職には、下記のような役割があります。

 

①施工品質を守る役割

塗装工事は、仕上がりの見た目だけでなく、下地処理、塗布量、乾燥時間、工程順守、材料管理など、品質を左右する要素が多くあります。

管理職は、職人一人ひとりの作業を見ながら、会社として守るべき施工基準を現場に浸透させる必要があります。

 

②工程を管理する役割

塗装工事は天候の影響を受けやすく、雨天や強風、気温、湿度によって作業計画を柔軟に見直す必要があります。

管理職は、工期を守るために無理な作業を進めるのではなく、安全と品質を踏まえたうえで、現実的な工程判断を行う必要があります。

 

③人を育てる役割

若手職人が定着し、一人前になるためには、現場での指導が欠かせません。

管理職は、若手に作業を教え、失敗を振り返らせ、成長を認め、次の課題を与える役割を担います。

 

④顧客や元請けとの信頼関係を守る役割

現場でのあいさつ、近隣対応、工事内容の説明、トラブル時の初期対応は、会社全体の印象に直結します。

管理職が顧客対応を丁寧に行えば、クレームを未然に防ぎ、追加工事や紹介につながる可能性も高まります。

 

⑤経営視点を持つ役割

材料の無駄、手戻り、工期遅延、外注費の増加、クレーム対応の発生は、すべて利益に影響します。

管理職が現場の数字に関心を持ち、原価や生産性を意識できるようになれば、塗装会社の収益力は高まりやすくなります。

1on1では、これらの役割を一度に求めるのではなく、本人の成長段階に応じて一つずつ理解させることが重要です。

管理職の役割を言語化し、本人とすり合わせることが、管理職育成の第一歩になります。

 

5. 現場責任者・職長に必要なマネジメント力

塗装会社の現場責任者や職長に必要なマネジメント力は、単に人に指示を出す力ではなく、現場の状況を読み取り、人を動かし、品質と工期を守りながら、若手の成長と顧客満足を同時に実現する力です。

この力は、職人としての経験を積むだけで自然に身につくものではありません。

むしろ、職人として優秀な人ほど、自分の基準で仕事を進めることに慣れているため、他人に分かりやすく教えることや、相手の理解度に合わせて任せることに苦手意識を持つ場合があります。

現場責任者に必要なのは、主に下記5つの力・スキルです。

 

①段取り力

塗装現場では、足場、洗浄、下地処理、養生、下塗り、中塗り、上塗り、検査、清掃、引き渡しまで、複数の工程がつながっています。

どこか一つの段取りが悪ければ、職人の待ち時間が増えたり、材料が足りなくなったり、工程がずれたりします。

現場責任者は、当日の作業だけでなく、翌日以降の流れまで考えて職人を動かす必要があります。

 

②伝達力

経営者や営業担当から聞いた顧客要望、施工上の注意点、工程変更、品質基準を、現場の職人に正しく伝える力が求められます。

伝えたつもりでも相手が理解していなければ、現場ではミスや手戻りが発生します。

 

③育成力

若手職人は、ただ現場に連れて行くだけでは育ちません。

何を見ればよいのか、どの作業を任せるのか、どの段階で確認するのか、失敗したときにどう振り返るのかを設計する必要があります。

 

④調整力

現場では、顧客、元請け、協力会社、近隣住民、社内の職人など、多くの関係者との調整が発生します。

現場責任者は、自分の意見を押し通すだけではなく、相手の立場を理解しながら、会社として守るべき基準を通す必要があります。

 

⑤報告力

経営者や幹部が現場の実態を把握するためには、現場責任者からの報告が欠かせません。

問題が起きてから報告するのではなく、問題が起きそうな段階で共有できる現場責任者は、会社にとって非常に重要な存在です。

1on1では、これらのマネジメント力を項目ごとに振り返り、本人がどの力を伸ばすべきかを明確にすることが重要です。

 

6. 1on1が管理職育成に有効な理由

1on1が管理職育成に有効な理由は、管理職候補の行動や考え方を日常的に振り返り、現場での経験を学びに変えることができるからです。

管理職育成は、研修を一度受ければ完了するものではありません。

特に塗装業界のように現場ごとの変化が大きい仕事では、日々の判断、指示、トラブル対応、若手指導、顧客対応の中に、管理職として成長するための材料が数多く含まれています。

しかし、それらの経験を振り返る機会がなければ、本人は同じ失敗を繰り返したり、自己流の管理に偏ったりする可能性があります。

1on1は、管理職候補が経験した現場での出来事を、経営者や幹部と一緒に整理する場になります。

たとえば、若手に指示が伝わらなかった、工程が遅れた、顧客から質問を受けて回答に迷った、協力会社との関係がうまくいかなかったといった出来事について、何が原因だったのか、次にどうすればよいのかを対話の中で考えることができます。

この振り返りを継続すれば、管理職候補は単なる経験者ではなく、経験から学べる人材へ成長します。

また、1on1は、管理職候補の不安や孤立を防ぐ効果もあります。

現場責任者や職長は、若手と経営者の間に立つ立場であり、ときには現場の不満を受け止めながら、会社の方針も伝えなければなりません。

この役割は精神的な負担が大きく、周囲から見る以上に孤独を感じやすいものです。

1on1で経営者や幹部が定期的に話を聞けば、本人は自分の悩みを相談できる相手がいると感じやすくなります。

さらに、1on1は経営者の考えを管理職候補に伝える場としても有効です。

会社としてどのような品質を大切にするのか、どのような顧客対応を重視するのか、若手をどのように育てたいのか、利益をどのように考えるのかを継続的に伝えることで、管理職候補は経営視点を身につけやすくなります。

管理職育成では、知識を教えること以上に、経営者が大切にしている判断基準を伝えることが重要です。

1on1は、その判断基準を日々の現場経験と結び付けて伝えるための実践的な場になります。

 

7. 管理職候補の強みと課題を把握する1on1

管理職候補を育成するためには、まず本人の強みと課題を正確に把握することが重要です。

塗装会社では、「仕事ができる」「現場で頼りになる」「社歴が長い」という理由で管理職候補に選ばれることがありますが、それだけでは育成方針を立てるには不十分です。

管理職候補には、技術力、段取り力、若手指導力、顧客対応力、報告力、調整力、数字への意識など、複数の能力が求められます。

そのため、1on1では、本人がどの領域に強みを持ち、どの領域に課題があるのかを具体的に確認する必要があります。

たとえば、技術力は高いものの、若手への教え方が感覚的で分かりにくい人材がいます。

この場合、本人に必要なのは、さらに技術を高めることだけではなく、作業の手順や注意点を言語化して伝える力です。

また、現場での人望はあるものの、工程管理や報告が苦手な人材もいます。

この場合、本人に必要なのは、現場の雰囲気づくりに加えて、進捗やリスクを早めに共有する習慣です。

さらに、顧客対応は丁寧でも、若手に注意することが苦手な人材もいます。

この場合、本人には、相手を否定せずに改善を促す伝え方を身につけてもらう必要があります。

1on1では、こうした強みと課題を本人と一緒に整理します。

重要なのは、課題を一方的に指摘するのではなく、本人自身に現場での手応えや困りごとを話してもらうことです。

 

①「最近、現場を任される中でうまくいったことは何か」

②「若手に教える中で難しいと感じる場面はどこか」

③「顧客対応で判断に迷ったことはあるか」

④「社長や幹部に早めに相談すべきだったと感じる場面はあったか」

 

このような質問を通じて、本人の自己認識を深めます。

管理職候補が自分の強みと課題を理解できれば、育成は格段に進めやすくなります。

反対に、本人が自分の課題を理解していないまま役割だけを与えられると、不満や自信喪失につながる可能性があります。

1on1は、管理職候補を評価するためだけの場ではなく、本人が自分自身を客観的に見つめ、次の成長課題を理解するための場として活用すべきです。

 

8. 現場管理力を高める1on1の進め方

塗装会社の管理職候補に現場管理力を身につけてもらうためには、1on1の中で現場の出来事を具体的に振り返ることが重要です。

現場管理力は、机上の知識だけでは身につきません。

実際の現場で起きた工程の遅れ、材料不足、職人同士の連携不足、顧客からの要望変更、天候による予定変更などを振り返りながら、次にどう判断すべきかを考えることで高まっていきます。

1on1では、まず担当した現場について、予定通り進んだ点と想定外だった点を確認します。

そのうえで、管理職候補本人がどのように判断し、どのように職人へ指示を出し、どのタイミングで経営者や幹部へ報告したのかを整理します。

ここで重要なのは、結果だけを責めるのではなく、判断の過程を確認することです。

たとえば、工程が遅れた場合でも、本人の段取り不足が原因なのか、天候や追加作業が原因なのか、顧客との事前確認が不足していたのか、職人配置に無理があったのかによって、次の改善策は変わります。

また、現場管理力を育てるには、管理職候補に「先を見る力」を持たせる必要があります。

当日の作業を終わらせるだけでなく、翌日以降の作業、材料の準備、顧客への説明、近隣対応、他業者との調整まで考えられるようにすることが重要です。

1on1では、「次の現場で事前に確認すべきことは何か」「工期がずれそうな場合、誰にいつ報告するべきか」「若手にどの作業を任せると成長につながるか」といった問いを投げかけると効果的です。

さらに、現場管理力には、問題を早めに共有する力も含まれます。

管理職候補の中には、責任感が強いあまり、問題を自分一人で抱え込んでしまう人材がいます。

しかし、塗装現場では、報告が遅れるほど選択肢が少なくなり、顧客対応や工程調整が難しくなります。

1on1では、「どの段階で報告すべきだったか」「一人で抱え込まずに相談できる場面はどこだったか」を振り返ることで、早期共有の重要性を理解させることができます。

現場管理力は、経験の量だけでなく、経験を振り返る質によって高まります。

そのため、1on1を現場の振り返りの場として活用することが、管理職育成には非常に有効です。

 

9. 若手職人への指導力を伸ばす対話設計

塗装会社の管理職候補にとって、若手職人への指導力は非常に重要な能力です。

なぜなら、若手が定着し、一人前に育つかどうかは、日々の現場で誰がどのように関わるかによって大きく変わるからです。

経営者がどれだけ教育の重要性を語っても、現場で実際に若手と接する管理職候補が適切に指導できなければ、若手は不安を抱えやすくなります。

若手指導でよく起こる問題は、管理職候補が自分の感覚をそのまま相手に求めてしまうことです。

たとえば、「見れば分かる」「一回教えたからできるはず」「自分の若い頃はもっと厳しかった」という考え方が強いと、若手の理解度に合わせた指導ができなくなります。

もちろん、塗装の仕事には、現場で経験しなければ分からない部分があります。

しかし、未経験者や若手がつまずきやすいポイントを整理し、作業の意味や注意点を言葉で伝えることは、現在の人材育成において欠かせません。

1on1では、管理職候補が若手にどのような指導を行っているかを具体的に確認します。

 

①「若手に作業を教えるとき、どこまで説明しているか」

②「できなかったとき、どのように改善点を伝えているか」

③「注意する場面と褒める場面のバランスは取れているか」

④「若手が質問しやすい雰囲気を作れているか」

 

このような質問を通じて、管理職候補自身の指導スタイルを振り返らせます。

また、若手指導では、作業を任せる範囲の設計も重要です。

最初から難しい作業を任せすぎれば失敗が増え、逆に簡単な作業ばかり任せれば成長実感が得られません。

管理職候補には、若手の習熟度に合わせて、少し背伸びすればできる仕事を任せる視点を持たせる必要があります。

1on1では、「次の現場で若手に何を任せるか」「任せた後にどのタイミングで確認するか」「失敗した場合にどう振り返るか」を一緒に考えると効果的です。

さらに、若手への指導力を伸ばすには、管理職候補自身が指導を評価される仕組みも必要です。

現場を早く終わらせることだけが評価される会社では、管理職候補は若手育成に時間を使いにくくなります。

経営者・幹部は、1on1を通じて、若手を育てることも管理職の重要な役割であると伝え続けることが大切です。

 

10. 工程管理・品質管理の視点を育てる方法

塗装会社の管理職育成では、工程管理と品質管理の視点を早い段階から育てることが重要です。

職人として働いている段階では、自分の担当作業を丁寧に行うことが中心になりますが、管理職になると、現場全体の流れを見ながら、品質を落とさずに工期を守る判断が求められます。

塗装工事は天候の影響を受けやすく、雨天、強風、気温、湿度、乾燥時間によって作業可否や工程が変わります。

そのため、管理職には、単に予定表通りに進める力ではなく、現場条件を見ながら最適な判断を行う力が必要です。

工程管理の視点を育てるには、1on1で現場の段取りを振り返ることが有効です。

 

①「今回の現場で工程が予定通り進んだ理由は何か」

②「遅れが出た場合、どの段階で予測できたか」

③「材料や人員の準備で改善できる点はあったか」

④「天候リスクに対して事前に打てる手はあったか」

 

このような問いを通じて、管理職候補に工程を結果ではなくプロセスとして考えさせます。

一方、品質管理の視点を育てるには、仕上がりの確認だけでなく、品質を左右する工程の確認が必要です。

塗装の品質は、上塗りの美しさだけで決まるものではなく、下地処理、洗浄、補修、養生、塗布量、乾燥時間、材料の選定、施工環境などによって決まります。

管理職候補には、品質トラブルが起きたときに、表面的なミスだけでなく、どの工程で問題が生じたのかを考える力を身につけてもらう必要があります。

1on1では、「今回の現場で品質面の不安はなかったか」「若手の作業確認はどのタイミングで行ったか」「顧客から見たときに気になる点はなかったか」「手直しを防ぐために次回改善できることは何か」といったテーマを扱うと効果的です。

また、工程管理と品質管理は、利益管理とも密接に関係します。

工程が遅れれば人件費や外注費が増え、品質不良が起きれば手直しやクレーム対応が発生します。

管理職候補がこのつながりを理解できれば、現場判断に経営視点が加わります。

1on1では、工期、品質、利益が別々のテーマではなく、現場管理の中で一体となっていることを伝えることが重要です。

 

11. 管理職候補に経営視点を持たせる1on1

塗装会社の管理職候補を真の意味で育成するためには、現場管理力だけでなく、経営視点を持たせることが欠かせません。

経営視点とは、会社全体の利益、顧客満足、採用、定着、紹介、ブランド、再受注を踏まえて、現場での判断を行う力です。

職人として働く段階では、自分の作業品質や現場の進捗に意識が向きやすいですが、管理職になると、現場での一つひとつの判断が会社の経営成果にどう影響するのかを理解する必要があります。

たとえば、材料の無駄遣い、段取り不足による待ち時間、手戻り、クレーム対応、近隣トラブル、若手の離職は、すべて会社の利益や評判に影響します。

管理職候補がこれらを単なる現場の出来事として捉えるのか、経営上の損失や機会損失として捉えるのかによって、判断の質は大きく変わります。

1on1では、管理職候補に対して、現場と数字のつながりを分かりやすく伝えることが重要です。

いきなり詳細な財務知識を求める必要はありませんが、工期が延びると人件費が増えること、手直しが発生すると利益が減ること、顧客満足が高まると紹介や口コミにつながること、若手が辞めると採用費と教育時間が再び必要になることは、具体的に説明する必要があります。

また、経営視点を育てるには、経営者が判断基準を共有することも重要です。

 

①「なぜこの現場では追加対応を丁寧に行うのか」

②「なぜ多少時間がかかっても品質基準を守るのか」

③「なぜ若手に任せる時間をあえて作るのか」

④「なぜ顧客への報告を早める必要があるのか」

 

このような判断の背景を伝えることで、管理職候補は経営者の考え方を理解しやすくなります。

さらに、1on1では、管理職候補に現場改善の提案を求めることも有効です。

 

①「現場の無駄を減らすには何ができるか」

②「若手が早く育つために変えるべきことは何か」

③「顧客満足を高めるために現場でできることは何か」

 

このような問いを通じて、本人に経営側の視点で考える習慣を持たせます。

管理職候補が経営視点を持てるようになると、経営者の指示を待つだけでなく、自ら現場改善を考え、会社全体の成果に貢献できる人材へ成長しやすくなります。

 

12. プレイングマネージャー化を防ぐ役割整理

中小塗装会社で管理職育成を進める際に注意すべき大きな課題の一つが、管理職候補のプレイングマネージャー化です。

プレイングマネージャーとは、自分自身も現場作業を行いながら、同時に人材育成、工程管理、品質管理、顧客対応、報告業務まで担う立場です。

中小企業では一定程度避けられない側面がありますが、役割整理をしないまま任せ続けると、管理職候補に過度な負担が集中します。

塗装会社では、現場責任者が自ら作業をしなければ工期が間に合わない場面もあります。

しかし、常に自分が手を動かしている状態では、若手の作業を見る時間、顧客と話す時間、翌日の段取りを考える時間、経営者へ報告する時間が不足します。

その結果、現場責任者は忙しく動いているにもかかわらず、管理職としての役割を十分に果たせなくなります。

さらに、本人が疲弊すると、若手への指導が雑になったり、報告が遅れたり、現場の雰囲気が悪くなったりする可能性があります。

この問題を防ぐためには、1on1で管理職候補の業務負荷を定期的に確認することが重要です。

 

①「自分の作業にどれくらい時間を使っているか」

②「若手を見る時間を確保できているか」

③「工程や顧客対応を考える余裕があるか」

④「本来任せるべき作業まで自分で抱えていないか」

 

このような問いを通じて、本人の役割が過剰になっていないかを確認します。

また、経営者・幹部は、管理職候補に対して「何を自分でやるべきか」「何を若手に任せるべきか」「何を経営側へ相談すべきか」を明確に伝える必要があります。

役割が曖昧なままだと、責任感の強い人材ほどすべてを自分で抱え込んでしまいます。

管理職育成において重要なのは、本人に負担をかけることではなく、周囲を動かして成果を出せる状態へ移行させることです。

そのためには、任せる力、確認する力、相談する力を育てる必要があります。

1on1は、管理職候補がプレイヤー業務とマネジメント業務のバランスを振り返り、役割の整理を進めるための有効な場になります。

 

13. 管理職の悩みや孤立を防ぐフォロー体制

塗装会社の管理職や現場責任者は、会社の中で孤立しやすい立場にあります。

若手からは相談や不満を受け、経営者からは現場運営の成果を求められ、顧客や元請けからは品質や工期への期待を受けるため、複数の立場の間で調整を行わなければなりません。

この役割は非常に重要である一方で、本人が悩みを相談できる相手がいないと、精神的な負担が大きくなります。

特に中小塗装会社では、管理職の人数が限られているため、同じ立場で悩みを共有できる相手が少ない場合があります。

経営者には弱音を吐きにくく、若手には不安を見せにくいという状況が続くと、管理職候補は一人で問題を抱え込みやすくなります。

その結果、現場責任者として頑張っている人材ほど疲弊し、最終的には離職や役割辞退につながる可能性があります。

このような孤立を防ぐためには、管理職向けの1on1を定期的に実施することが重要です。

一般的に1on1は若手向けの施策として捉えられがちですが、実際には管理職や現場責任者こそ、経営者や幹部との対話機会を必要としています。

1on1では、現場運営の悩み、若手指導の難しさ、顧客対応の不安、工程管理の負担、人間関係のストレス、役割への不満を確認します。

このとき、経営者は結果だけを確認するのではなく、本人がどのような負担を感じているのかを丁寧に聞く必要があります。

また、フォロー体制では、管理職が相談しやすい報告ルートを作ることも大切です。

問題が起きてから叱責される組織では、管理職は報告をためらいます。

一方で、問題が小さい段階で相談すれば一緒に考えてもらえる組織では、管理職は早めに情報を出しやすくなります。

経営者・幹部は、管理職候補に対して「問題を抱え込むことが責任感ではなく、早めに共有することが管理職としての責任である」と伝える必要があります。

さらに、管理職同士が学び合う場を作ることも有効です。

現場責任者が複数いる会社では、定期的に現場での成功事例や失敗事例を共有することで、個人の経験を会社全体の知見に変えることができます。

1on1と管理職同士の共有を組み合わせることで、管理職の孤立を防ぎ、組織全体の現場管理力を高めることができます。

 

14. 1on1を評価制度・教育制度と連動させる方法

1on1を管理職育成に活かすためには、単独の対話施策として終わらせるのではなく、評価制度や教育制度と連動させることが重要です。

ただし、1on1で話した悩みや本音をそのまま評価に反映するという意味ではありません。

1on1は、あくまで本人の成長支援と状態把握の場であり、評価面談とは目的を分ける必要があります。

一方で、1on1で見えてきた成長課題や役割認識を、教育計画や評価項目に接続することは非常に有効です。

塗装会社では、現場責任者や管理職の評価基準が曖昧になっていることがあります。

現場を問題なく終わらせたか、社長から見て頼りになるか、職人として腕が良いかといった感覚的な評価だけでは、本人は何を伸ばせば管理職として評価されるのか分かりません。

そのため、管理職に求める能力を項目化することが重要です。

たとえば、工程管理、品質管理、安全管理、若手指導、顧客対応、報告連絡相談、原価意識、改善提案、チームづくりなどを評価項目として整理します。

1on1では、これらの項目について本人の現状を振り返り、次に伸ばすべき能力を明確にします。

たとえば、若手指導に課題がある場合は、次回までに若手へ任せる作業を決め、その結果を振り返るようにします。

報告が遅れがちな場合は、どのタイミングで経営者に共有するかの基準を決めます。

顧客対応に課題がある場合は、説明の仕方や確認事項を事前に整理します。

このように、1on1で決めた行動が教育の実践になり、その積み重ねが評価に反映される流れを作れば、本人は成長と評価の関係を理解しやすくなります。

また、教育制度と連動させる場合は、管理職候補ごとに育成テーマを設定することが有効です。

全員に同じ教育を行うのではなく、技術は高いが指導が苦手な人、顧客対応は得意だが数字に弱い人、段取りは良いが報告が遅い人など、個人の課題に合わせて育成内容を変える必要があります。

1on1は、その個別育成を進めるための中心的な仕組みになります。

評価制度と教育制度が1on1と連動すれば、管理職候補は自分の成長課題を理解し、会社が求める管理職像に向かって段階的に成長しやすくなります。

 

15. 中小塗装会社が1on1を定着させる運用ポイント

中小塗装会社が1on1を管理職育成に定着させるためには、大企業のような複雑な制度をそのまま導入するのではなく、自社の規模、現場数、社員構成、経営者と管理職候補の距離感に合わせて、無理なく続けられる運用にすることが重要です。

1on1は、完璧なシートや高度な研修から始める必要はありません。

むしろ、最初から細かい記録や厳密な運用ルールを作りすぎると、現場責任者や幹部の負担が増え、継続できなくなる可能性があります。

まずは、経営者または幹部が管理職候補と月一回程度の1on1を行い、現場運営の振り返り、若手指導の悩み、役割認識、次月の課題を確認するところから始めるのが現実的です。

実施時間は、必ずしも長時間である必要はありません。

重要なのは、定期的に行い、前回話した内容を踏まえて次回も対話することです。

毎回テーマが変わり、前回の約束が確認されない1on1では、本人は成長の積み重ねを感じにくくなります。

そのため、1on1では「前回決めたこと」「今回うまくいったこと」「今回課題になったこと」「次回までに取り組むこと」を簡潔に確認する流れを作るとよいです。

また、定着のためには、1on1を実施する目的を管理職候補に明確に伝える必要があります。

「管理職として成長してほしいから行う」「現場を任せるために必要な支援をしたい」「悩みを早めに共有してほしい」「会社の考え方を伝えたい」といった目的を伝えれば、本人も前向きに受け止めやすくなります。

一方で、1on1が単なる進捗確認や叱責の場になると、管理職候補は本音を話さなくなります。

そのため、経営者・幹部は、結果を確認するだけでなく、本人がどのように考え、何に迷い、どのような支援を必要としているのかを聞く姿勢を持つ必要があります。

さらに、1on1で得た内容を会社の仕組み改善につなげることも大切です。

管理職候補から同じような悩みが繰り返し出る場合、それは本人だけの問題ではなく、会社の教育体制、評価制度、役割分担、報告ルールに課題がある可能性があります。

1on1を個人面談で終わらせず、会社全体の管理職育成の仕組みへ反映させることで、塗装会社の組織力は着実に高まります。

 

16. 結論・まとめ:1on1で次世代管理職が育つ塗装会社をつくる

塗装業界における管理職育成は、会社の将来を左右する重要な経営課題です。

特に中小規模の塗装会社では、経営者一人がすべての現場を見続けることには限界があり、施工品質、工程管理、若手育成、顧客対応、利益管理を現場で支えられる管理職の存在が不可欠になります。

しかし、管理職は自然に育つものではありません。

腕の良い職人を現場責任者に任命するだけでは、管理職として必要な役割認識、指導力、段取り力、報告力、経営視点が十分に育つとは限りません。

むしろ、支援がないまま責任だけを増やすと、本人は負担を感じ、管理職になることに消極的になる可能性があります。

だからこそ、塗装会社の経営者・幹部は、管理職育成を偶然に任せるのではなく、計画的な対話と育成の仕組みとして1on1を活用する必要があります。

1on1を通じて、管理職候補の強みと課題を把握し、現場管理の振り返りを行い、若手指導の悩みを整理し、工程管理や品質管理の視点を育て、経営者の判断基準を伝えることができます。

また、1on1は管理職候補の孤立を防ぐ効果もあります。

現場責任者や職長は、若手と経営者の間に立ち、多くの責任を背負う立場であるため、定期的に悩みを相談できる場がなければ、精神的な負担が蓄積しやすくなります。

経営者や幹部が1on1で本人の状態を確認し、必要な支援を行うことで、管理職候補は安心して成長に向き合うことができます。

さらに、1on1を評価制度や教育制度と連動させれば、管理職候補は自分が何を伸ばせばよいのか、どの行動が評価されるのかを理解しやすくなります。

これは、管理職育成だけでなく、人材定着や若手育成にもつながります。

塗装会社が今後も安定して成長していくためには、施工技術に優れた職人を育てるだけでなく、現場を任せられる管理職を育てる必要があります。

そのためには、経営者の考えを言語化し、管理職候補と定期的に対話し、現場経験を学びに変える仕組みが欠かせません。

1on1は、その仕組みを作るための現実的で効果的な手法です。

塗装会社が1on1を継続的に活用できれば、職人から管理職へ成長する道筋が明確になり、若手が育ち、現場責任者が育ち、経営者が現場を任せられる強い組織づくりにつながります。

 

17. 参考資料

中小企業庁|中小企業者・小規模企業者の定義、塗装会社を含む中小企業向け記事における読者ターゲットの前提整理。

厚生労働省|人材確保等支援助成金、雇用管理制度・雇用環境整備助成コース、職場活性化制度、1on1ミーティング導入に関する考え方。

厚生労働省|1on1ミーティングの定義、上司と部下による一対一の対話、キャリア形成や業務課題を扱う面談設計の考え方。

厚生労働省|企業における人材育成事例、従業員の成長支援、働きがい向上、職場づくりに関する実践事例。

厚生労働省|キャリア開発の取組み、社員のキャリア形成支援、企業が必要とする人材の育成方針に関する考え方。

厚生労働省|職業能力開発計画事例、従業員の適性・希望を踏まえた計画的な研修、自発的な能力開発支援、職場環境整備に関する考え方。

厚生労働省|建設業における職業能力開発計画事例、安全施工、品質向上、工事コスト削減、継続的な企業運営に関する人材育成の考え方。

厚生労働省|人材開発支援助成金、建設業における労働者の育成、技能継承、認定職業訓練・指導員訓練に関する支援策。


18. 人材採用・募集活性化・1on1・人材定着・離職防止などに関する無料相談とお問い合わせ

船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングでは、人材採用・募集活性化・1on1・人材定着・離職防止などに関する無料相談やお問い合わせを受付しております。この機会にぜひ下記詳細をご確認の上、お申し込みください。

 

<詳細・お申し込みはこちらから>

 https://www.hc.funaisoken.co.jp/pages/consultation

 

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