なぜ「人的新規事業」か?──10兆円市場の"入口"に、まだ立っていない会社へ【部長/MDコラム】
2026.04.28
なぜ「人的新規事業」か?──10兆円市場の"入口"に、まだ立っていない会社へ。
株式会社 船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング
HRビジネスコンサルティング部
マネージング・ディレクター 大村 在龍
1. 新規事業の選択肢は無数にある。しかし「外さない一手」は限られている。
お世話になっております。株式会社船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングの大村です。
前回のコラムには、多くの方から反響をいただきました。改めて御礼申し上げます。
前回お伝えしたのは、次の2つのことでした。
(1)人手不足は「景気の問題」ではなく「構造の問題」であること。
(2)人が集まる会社は、「採用」ではなく「事業構造」を変えていること。
そして、「仲間を増やすために、新規事業に参入する」
──この逆転の発想こそが、これからの企業の生命線になる、とお伝えしました。
今回はその続きです。
「新規事業が大事なのはわかった。で、なぜ"人的"新規事業なのか?」
この問いに、データと事実で正面からお答えします。約5分のお付き合い、今回もよろしくお願いいたします。
2. まず、この数字を見てください。
矢野経済研究所の最新調査によると、2025年度の人材ビジネス主要3業界(人材派遣業・人材紹介業・再就職支援業)の市場規模は、約10兆955億円に達する見込みです。(出典:矢野経済研究所「人材ビジネス市場に関する調査(2025年)」)
10兆円。これがどれほどの規模か。
参考までに、広告業界の市場規模が約7兆円。鉄道業界が約13兆円。人材ビジネスは、日本の基幹インフラに匹敵する巨大市場です。
しかも、この10兆円は「天井」ではありません。
人材派遣市場は前年度比3.0%増の9兆3,220億円。人材紹介市場(ホワイトカラー職種)にいたっては前年度比12.0%増の4,490億円。人手不足が深刻化するほど、この市場は膨らみ続けます。
ここで、冷静に考えていただきたいのです。
「今後何十年にわたって縮小しない市場」が、日本に他にいくつありますか?
3. 「でも、人材ビジネスなんて大手がやるものでしょう?」
そうお考えになるのは自然です。リクルート、パーソル、パソナ──大手の名前が浮かぶでしょう。
しかし、この認識には大きな「見落とし」があります。
人材ビジネスの真の成長領域は、大手が取りきれない「現場」にある。
たとえば、人材紹介。
現在、人材紹介市場全体の手数料規模は約9,835億円に迫っています(出典:厚生労働省「有料職業紹介事業に関する手数料収入の推移」)。しかし、矢野経済研究所の調査によると、大手が主戦場とする『ホワイトカラー職種』の市場規模はそのうちの4,490億円にとどまります。
大手はホワイトカラーのハイクラス転職に強みがあります。しかし、建設現場での即戦力人材を探している会社や、地方の介護施設で夜勤をこなせる人材を求めている法人に対して、大手の仕組みは必ずしもフィットしません。
残りの半分以上を占める約5,000億円規模の市場こそが、大手の仕組みがフィットしていない『現場』の巨大なニーズなのです。※実際に近年、大手含め「現場資格職」人材に目を付け、次々に参入しつつあります。
たとえば、高卒・専門卒の就職市場。
大学生向けのナビサイトは飽和していますが、高卒・専門卒に特化した求人メディアは、需要に対して供給が圧倒的に足りていません。
たとえば、海外人材。
外国人労働者は2025年10月時点で過去最多の約257万人に達し、前年比11.7%の増加を記録しました。特定技能の在留外国人は2025年末で約39万人と前年比37.2%増で急伸。政府は受入れ見込み数を123万人に引き上げています。(出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」、出入国在留管理庁)
これだけ急速に市場が拡大しているのに、現場で受入れを支援できる事業者の数がまったく追いついていない。
つまり、「大手が取りきれない」のではなく、「誰もまだ十分に取れていない」のです。
4. 警備業──「後発でも勝てる」労働集約型の代表格。
もうひとつ、具体的にお話しさせてください。
警備業界。この市場も、いま非常に面白いことが起きています。
2024年末時点の警備業界の売上高総額は約3兆5,000億円。警備業者数は過去最高の1万811社を記録しています。(出典:警察庁「令和6年における警備業の概況」)
一方で、警備員の平均年齢は55歳以上。60代、70代の警備員が現場の大半を担っている業態です。
つまり、需要は増え続けているのに、供給する人材は高齢化で先細る。この「需給ギャップ」は、今後ますます広がる一方です。
しかも、東京商工リサーチの調査によると、2024年の警備業の倒産・休廃業件数は138件と過去最多を更新。大手2社(セコム・ALSOK)が売上全体の34.5%を占める一方で、中小・零細の淘汰が加速しています。(出典:東京商工リサーチ「警備業界の動向調査(2025年5月)」)
ここにチャンスがあります。
大手が寡占化する裏で、中小が撤退した「空白エリア」が生まれている。
その空白に、正しい仕組みを持って参入すれば、後発でも十分に勝機がある。実際に私たちがご支援した企業の中には、異業種から警備業に新規参入し、短期間で事業を軌道に乗せた例が複数あります。
5. なぜ、新規事業の中でも「人的」がベストなのか?
ここまでの話を整理します。「数ある新規事業の選択肢の中で、なぜ"人的新規事業"を推すのか」──その理由を5つに絞ってお伝えします。
【理由1】市場が縮まない。2030年に644万人(パーソル総合研究所推計)、2040年に1,100万人(リクルートワークス研究所推計)の労働力不足が予測されています。人手不足が続く限り、人材サービスの需要は構造的に拡大し続けます。
【理由2】参入障壁が「適度」である。人材紹介業は許認可制ですが、IT投資に数億円かかるようなビジネスではありません。「人」と「仕組み」があれば始められる。一方で、法規制があるために無秩序な参入が起きにくく、きちんと運営する企業には安定した収益が見込めます。
【理由3】既存事業とのシナジーが出やすい。製造業、建設業、介護、飲食──どんな業種の企業でも、「自社の業界で人手が足りない」という課題は共通です。自社業界の人材ニーズを深く理解していること自体が、人材ビジネスにおける最大の武器になります。
【理由4】ストック型の収益構造が組める。人材派遣や警備業は、一度契約が成立すれば毎月安定した売上が発生するストックビジネスです。既存事業が季節変動やプロジェクト単位で売上が上下する会社にとって、この安定収益の柱は経営を大きく支えます。
【理由5】「仲間を増やす装置」になる。前回のコラムでお伝えした通り、新規事業は採用力そのものです。「人材ビジネスも、警備事業もやっている」という多角的な事業構造が、求職者にとっての魅力になります。キャリアの選択肢が増えるほど、人は集まる。これは多角化に成功している企業に共通する構造です。
6. 「うちの業種から人材ビジネスなんて、飛躍しすぎでは?」
この疑問は、実はいちばん多くいただくご質問です。
お気持ちはわかります。しかし、こう考えてみてください。
あなたの会社は、毎年、求人広告を出していませんか?エージェントに紹介手数料を払っていませんか?面接し、教育し、定着させるために膨大な時間を使っていませんか?
──あなたはすでに「人材ビジネス」のコストを払っている。ただ、それを「事業」として収益化していないだけです。
自社で人材を採用するノウハウを、そのまま「他社の採用を支援するサービス」に転換する。自社の業界で不足している人材を、業界全体に供給する仕組みをつくる。自社が苦労してきた人材確保の経験こそが、人材ビジネスにおける最大の資産になる。
「業界知識×採用の実体験」は、大手人材会社にはない圧倒的な強みです。
7. 2027年、もうひとつの「構造変化」が起こります。
最後にもうひとつ、「今」動くべき理由をお伝えします。
2027年、外国人材の受入れ制度が大きく変わります。従来の技能実習制度に代わり、「育成就労制度」が施行されます。
この制度変更は、海外人材就労支援ビジネスにとって、巨大な商機の到来を意味します。
なぜなら、新制度の趣旨は「国際貢献」から「人材確保と育成」へと明確に転換されるためです。受入れ企業は、外国人材を「労働力」としてだけでなく、「育成すべき人材」として位置づける必要がある。その支援を行う登録支援機関や監理支援機関の需要は、これから爆発的に増えます。
2027年の制度施行に向けた準備期間は、今この瞬間から始まっています。
制度が変わってから動いたのでは、もう遅い。先行して支援体制を構築した事業者だけが、新制度の恩恵を受けることができます。
8. まずは、「知ること」から始めてみませんか。
ここまでお読みくださったあなたに、2つのご案内があります。
【ご案内1】無料・経営相談(オンライン対応可)
「人的新規事業に興味はあるが、自社に合うかどうかわからない」「何から手をつければいいか、具体的に聞いてみたい」
そんな方のために、弊社では無料の経営相談を承っております。人材ビジネス・警備業・ビルメンテナンス業の新規参入から、既存事業の活性化まで、まずはお話をお聞かせください。
▼無料経営相談のお申し込みはこちら
【ご案内2】経営勉強会への初回お試し参加(無料ご招待)
弊社では、同じ志を持つ経営者・事業責任者が集う経営勉強会を定期開催しています。
◆人材ビジネス経営研究会―人材紹介・人材派遣・求人メディア・海外人材就労支援の立ち上げ・活性化に取り組む経営者のための研究会です。先行事例の共有、最新の市場動向、実務ノウハウの交換を行っています。
◆警備・ビルメンテナンス研究会―警備業・ビルメンテナンス業の新規参入・事業活性化を目指す経営者のための研究会です。後発参入で成果を出した企業の「型」や、採用・定着の仕組みづくりを具体的に学べます。
いずれも、初回は無料でご参加いただけます。「まずはどんな雰囲気か見てみたい」という方も大歓迎です。
▼経営勉強会の詳細・初回参加お申し込みはこちら
人材ビジネス経営研究会(人材派遣・人材紹介分科会/海外人材ビジネス分科会)
9. 「人的新規事業」の追い風
前回のコラムで、こう書きました。
「人が足りない」と嘆く会社は生き残れない。
「人が集まる構造」を持つ会社だけが生き残る。
今回、その「構造」の正体をお伝えしました。
10兆円の人材ビジネス市場。3.5兆円の警備市場。257万人を超え、なお急増する外国人労働者。2027年の育成就労制度という制度転換。
これらすべてが、「人的新規事業」の追い風です。
風が吹いている今、帆を上げるかどうか。その判断が、3年後のあなたの会社の景色を決めます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回のコラムもぜひお楽しみに。
10. 船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング:無料個別相談のお申し込みはこちらから
下のリンク先からご確認ください。
https://www.hc.funaisoken.co.jp/pages/consultation
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