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【中小タクシー会社経営】物価高・コスト高やドライバー不足・採用難の課題解決に向けて「その2」

2026.05.08

 

 

本コラム記事では、主に中小タクシー会社の経営者・幹部・人事責任者に向けて、物価高・コスト高とドライバー不足・採用難が同時進行するなかで、収益確保と人材確保をどう両立するかを2部構成で「その2」として整理しています。運賃、採用、育成、配車・業務改善、活用し得る公的支援まで、実務目線で解説しています。この機会にぜひご覧ください。

※「その1」のコラムに関しましては、下記URLからご確認ください。

https://www.hc.funaisoken.co.jp/blogs/column/taxi_keiei_solution_for_high_cost_and_driver_saiyo_problem_sono1

 

1. 管理職と配車責任者の役割を再設計する

この章では、採用や定着の成否を左右する管理側の役割を考えます。
中小タクシー会社では、経営者と現場の距離が近い一方で、管理職の役割が曖昧になりやすい傾向があります。
しかし、採用難と定着難の時代には、管理職の質がそのまま経営成果に表れます。

とくに重要なのは、配車責任者、運行管理者、班長クラスのマネジメントです。
この層は、現場の空気、業務負荷、教育、相談対応を左右する実務責任者です。
現場の不満や不安が最初に集まるのも、この層です。

管理職の役割を「問題が起きたときの指導」だけにすると、関係性は悪化しやすくなります。
本来は、稼働の安定、事故防止、教育支援、定着支援、情報共有を担う存在として位置づけるべきです。
乗務員の売上だけを見る管理から、乗務員が続く状態をつくる管理へ発想を切り替える必要があります。

また、管理職自身への教育も欠かせません。
採用面接の同席、入社後面談の実施、育成担当との連携などを通じて、現場管理者が人材確保の当事者になることが重要です。
これができる会社では、採用と現場運用のずれが減ります。

タクシー業界では、配車や運行の経験値が高い人ほど管理に回ることがあります。
ただし、経験豊富であることと、部下育成や対話ができることは別の能力です。
今後の中小タクシー会社では、管理職育成を後回しにしないことが、離職防止と生産性向上の両面で重要になります。

 

2. 配車・点呼・事務の生産性を上げるDX

この章では、人数が増えにくい時代の生産性向上策を整理します。
中小タクシー会社にとってDXとは、大がかりなシステム刷新だけを指すものではありません。
配車、点呼、勤怠、売上集計、請求、採用管理など、日々の業務を少ない人数で回しやすくする工夫全体を意味します。

国のIT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的に、デジタル化やDXに向けたITツール導入を支援しています。
中小タクシー会社でも、会計や勤怠だけでなく、採用管理や顧客管理の効率化に活用余地があります。 

DXの優先順位としては、まず現場負担の重い事務から着手するのが現実的です。
例えば、紙中心の勤怠や手集計が残っている場合、それだけで管理職の時間が削られます。
管理職が事務に追われるほど、採用面接や育成面談の時間が取れなくなります。

また、アプリ配車やキャッシュレス決済への対応はコスト負担を伴いますが、顧客利便性と稼働効率の両面で無視できません。
業界側からも、アプリ配車やキャッシュレス対応への費用増が指摘されている一方で、利用者利便向上の重要性も示されています。
したがって、DXは節約のためだけでなく、選ばれる会社になるための基盤でもあります。

さらに、データを見る習慣をつくることが大切です。
時間帯別売上、待機時間、配車応答率、離職時期、採用媒体別応募数などを把握できれば、勘と経験だけに頼らない経営ができます。
少人数経営の会社ほど、数字の見える化は意思決定の精度を高めます。

 

3. 高齢ドライバー活躍と安全確保を両立する

この章では、高齢化が進む現場で何を考えるべきかを整理します。
タクシー業界では高齢ドライバーの存在が不可欠です。
国土交通省の資料でも、65歳以上の運転者比率の高さが示されています。

したがって、高齢化を問題として否定的に捉えるだけでは現実的ではありません。
重要なのは、経験を活かしながら、安全と健康の管理を強めることです。
ベテランの接客力、地理感覚、顧客対応力は、会社にとって大きな資産です。

一方で、加齢に伴う体力変化や健康リスクへの配慮は必要です。
国土交通省は、プロドライバーの健康管理・労務管理向上による事故防止を進めています。
安全教育や健康確認を形式で終わらせず、実際の勤務設計に反映することが重要です。

例えば、長時間拘束が負担になりやすい乗務員には、無理の少ないシフトや担当エリアの見直しが考えられます。
また、定期的な面談で、本人の体調感覚と管理側の認識をすり合わせることも有効です。
高齢者活躍は、単に延長雇用することではなく、安全に働き続けられる設計を整えることです。

さらに、高齢ドライバーを教育役として活かす場合も配慮が必要です。
知識共有は有効ですが、感覚的な指導だけに頼ると、未経験者が理解しにくいことがあります。
経験を言語化し、標準化する仕組みがあってこそ、ベテランの価値が組織資産になります。

 

4. 外国人材や新たな担い手をどう考えるか

この章では、新たな人材確保の選択肢を考えます。
国土交通省は、自動車運送業分野で特定技能外国人の早期受入れに向けた対応を進めていると示しています。
タクシー分野でも、従来より人材確保の選択肢が広がりつつあります。

ただし、外国人材の活用は、単に人手を埋める発想で進めるべきではありません。
接客、日本語コミュニケーション、地域理解、安全運行、顧客対応、生活支援など、受け入れ側の体制整備が必要です。
受け入れ体制が弱いまま進めると、本人にも会社にも負担が大きくなります。

また、外国人材だけが解決策ではありません。
女性、高齢者、他業界からの転職者、短時間勤務希望者など、採用対象の見直しも同時に進める必要があります。
採用難が厳しい会社ほど、従来の理想人材像に固執しないことが重要です。

中小タクシー会社では、受け入れ人数が少ないからこそ、一人ずつ丁寧な立ち上げが求められます。
生活面の相談窓口、教育資料の分かりやすさ、管理者側の説明力が重要になります。
人材の多様化は、採用チャネルの拡大というより、組織運営の質を高める取り組みとして捉える方が実務的です。

将来的には、地域交通を担う事業者として、どの層が働きやすい会社にするかが競争力になります。
採用難の時代ほど、「誰を採るか」だけでなく「誰が働き続けられる会社か」を明確にする必要があります。
新たな担い手の確保は、会社の受け入れ成熟度を問うテーマでもあります。

 

5. 補助金・助成金を経営改善につなげる視点

この章では、公的支援をどう活かすかを整理します。
物価高や人手不足に直面すると、補助金や助成金の情報収集が先行しがちです。
しかし、本来は経営課題が先で、制度活用は後です。

例えば、IT導入補助金は、労働生産性向上を目的にITツール導入を支援する制度です。
採用管理、勤怠、請求、会計、顧客対応の改善など、明確な業務課題にひもづけて使うことで効果が出やすくなります。
単に「使えるから導入する」では、現場定着しにくくなります。

また、業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引上げと、生産性向上に資する設備投資等を組み合わせた制度です。
設備だけでなく、人材育成や教育訓練も対象になり得る点は、中小タクシー会社にとって重要です。
賃上げと生産性向上を別々に考えず、同時に進める発想が求められます。

さらに、人材開発支援助成金は、教育訓練の費用や訓練期間中賃金の一部を支援します。
未経験者採用を強める会社、管理職教育を進めたい会社には検討余地があります。
教育を我慢する会社より、制度を活かして計画的に育成する会社の方が、定着と品質の両面で優位になりやすくなります。

ただし、制度は年度や公募要件によって変わります。
実際の申請可否や対象経費は、公募要領や窓口確認が前提です。
経営者としては、制度を取りに行くのではなく、経営改善計画に制度を乗せる姿勢が重要です。

 

6. 中小タクシー会社が優先順位を誤らない進め方

この章では、何から着手すべきかを整理します。
課題が多いと、あれもこれも必要に見えて、現場が混乱しやすくなります。
そのため、経営改善は優先順位を誤らないことが重要です。

第一に見るべきは、現在の人員でどれだけ利益を出せているかです。
応募数が少ないことに目が向きがちですが、離職率、稼働率、配車効率、管理工数を把握しないと、本当のボトルネックは見えません。
採用難の裏に、職場条件や教育設計の弱さが隠れていることは少なくありません。

第二に、賃金と運賃の連動を考えるべきです。
賃上げだけ、または値上げだけでは、持続性が乏しくなります。
国土交通省が運賃改定と人材確保を結びつけている点は、経営実務でも重要な示唆になります。

第三に、管理職の役割を整えます。
採用した人が辞める会社では、現場受け入れの質に問題があることが多いからです。
管理職教育は後回しに見えますが、実際には離職防止の中核です。

第四に、DXや制度活用を進めます。
順番を逆にすると、システムは入ったが使われない、助成金は取ったが成果が出ないという状態になりがちです。
まずは人が続く土台を作り、そのうえで省力化や見える化を進める方が成功しやすくなります。

中小タクシー会社では、経営者が多くを抱え込みやすい傾向があります。
だからこそ、月次で確認する重点指標を絞り、改善テーマを少数に限定することが有効です。
優先順位の明確化が、疲弊しない改革につながります。

 

7. これからの地域交通の中で選ばれる会社になる条件

この章では、今後の中小タクシー会社がどのような方向を目指すべきかを考えます。
国土交通省は、「交通空白」解消に向けて、タクシーを含む多様な移動手段を総動員する方針を示しています。
これは、地域におけるタクシーの役割が今後さらに重要になることを意味します。

しかし、社会的役割が大きいだけでは、経営は続きません。
選ばれる会社になるためには、利用者、求職者、自治体、取引先のすべてに対して、信頼される運営が必要です。
その土台は、安全、安定供給、働きやすさ、説明責任にあります。

利用者から見れば、捕まりやすい、接客が安定している、決済が使いやすい、安心して乗れることが価値です。
求職者から見れば、未経験でも入りやすい、続けやすい、無理が少ない、相談しやすいことが価値です。
この二つを両立できる会社ほど、地域での存在感が高まります。

また、これからは経営者の考え方が外に伝わる時代です。
どのような地域を支えたいのか、どのような働き方を提供したいのか、どう育成するのかを発信できる会社は採用でも有利になります。
採用広報は広告ではなく、経営姿勢の表明です。

中小タクシー会社の強みは、意思決定の速さと地域密着です。
大手の模倣ではなく、自社の営業圏、顧客層、働き方に合った経営設計が重要です。
地域交通の担い手として選ばれる会社は、価格だけでなく、運営品質と人材品質で評価されるようになります。

 

8. 結論・まとめ

本章では、ここまでの内容をまとめます。
中小タクシー会社の経営課題は、物価高・コスト高、ドライバー不足、採用難が別々に存在しているのではなく、相互に結びついています。
そのため、どれか一つだけを対策しても、抜本改善にはつながりにくいのが実情です。

重要なのは、まず現場の維持ではなく、持続可能な利益構造への転換を意識することです。
適正運賃の確保、賃金への還元、教育投資、管理職育成、業務の見える化を一体で進める必要があります。
国土交通省や厚生労働省、中小企業庁の施策を見ても、人材確保、生産性向上、賃上げ、安全確保は切り離されていません。

また、採用の本質は募集数ではなく、続く人材を増やすことにあります。
未経験者が入りやすい入口設計、初期離職を防ぐ育成、相談しやすい管理体制があってこそ、採用費は生きます。
高齢ドライバーや新たな担い手を活かす発想も、受け入れ体制の整備が前提です。

さらに、今後のタクシー会社は、地域交通を支える存在として、自治体や地域社会との接点も増えていきます。
そのなかで選ばれるのは、安売りの会社ではなく、安定供給と働きやすさを両立する会社です。
中小タクシー会社の経営改善は、コスト削減だけではなく、人材と現場運営への再設計として進めることが大切です。

 

9. 参考資料

国土交通省|令和6年版国土交通白書「自動車運送事業等の動向と施策」。バス・タクシー分野の人材確保、運賃改定、二種免許取得支援、特定技能の方向性の根拠。
国土交通省|交通の動向・交通施策関連資料。地域交通とタクシーの位置づけ、業界動向整理の根拠。
国土交通省|「交通空白」解消に向けた取組方針。地域交通の中でタクシーが果たす役割の根拠。
国土交通省|自動車運送業を取り巻く現状と課題について。運送業分野の担い手不足と業界課題整理の根拠。
国土交通省|ハイタク事業における総合安全プラン2025関連資料。安全、健康管理、二種免許制度見直しの根拠。
国土交通省|高齢運転者に関する取組について。タクシー運転者の高齢化と安全配慮の根拠。
厚生労働省|自動車運転者の労働時間等の改善に関する説明資料。労働時間管理と改善基準告示対応の根拠。
厚生労働省|人材開発支援助成金。未経験者育成、教育訓練、管理職育成を進める際の制度活用の根拠。
厚生労働省|業務改善助成金。賃上げと生産性向上投資を組み合わせる際の制度活用の根拠。
中小企業庁|中小企業・小規模企業者の定義。中小タクシー会社の整理に用いる基本定義の根拠。
中小企業庁|IT導入補助金2025概要。配車・勤怠・請求・採用管理などの生産性向上投資の根拠。

 

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