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【中小規模の商社・卸業界向け】1on1で管理職育成を推進する方法とポイント

2026.06.17

 

 

本コラム記事では、中小規模の商社・卸業界の経営者・幹部向けに、1on1を活用して営業責任者、仕入れ責任者、物流責任者、業務管理職を育成し、部門間連携・人材定着・業績向上につなげる方法を解説しています。この機会にぜひご覧ください。

 

1.中小規模の商社・卸業界で管理職育成が重要になる理由

中小規模の商社・卸業界では、営業、仕入れ、在庫管理、物流、受発注、請求、顧客対応、メーカー対応など、複数の業務が密接に連動しています。

営業担当が顧客から受けた要望は、仕入れ担当、物流担当、営業事務、経理担当の仕事に影響し、どこか一つの部門で判断や連携が遅れると、納期遅延、誤出荷、欠品、クレーム、粗利低下につながります。

そのため、商社・卸会社の管理職には、単に自分の部門を管理する力だけでなく、営業、仕入れ、物流、事務の流れを理解し、部門間の調整を行う力が求められます。

特に中小規模の会社では、経営者や幹部が、主要顧客対応、価格交渉、仕入れ判断、トラブル対応、部下育成まで抱えているケースが少なくありません。

この状態が続くと、経営者が現場判断から離れられず、新規開拓、商品戦略、採用、DX、拠点展開、利益改善に時間を使いにくくなります。

商社・卸業界にて経営者依存から抜け出すには、営業責任者、仕入れ責任者、物流責任者、業務管理職、拠点長候補を計画的に育てる必要があります。

1on1は、管理職候補の悩みを聞くだけの面談ではありません。

管理職に必要な視点、判断基準、部下育成力、数字を見る力、部門間調整力を育てるための継続的な対話です。

中小規模の商社・卸会社が1on1を活用する際は、制度として面談を増やすのではなく、経営者の判断を管理職へ移していくための育成施策として設計することが重要です。

 

2.管理職候補は「売れる人」「詳しい人」だけで選ばない

商社・卸業界では、営業成績が高い人、商品知識が豊富な人、仕入れ先との関係が強い人、物流現場をよく知っている人が管理職候補になりやすい傾向があります。

もちろん、実務能力や経験は管理職にとって重要な土台です。

しかし、営業として優秀な人が、そのまま営業責任者として部下を育てられるとは限りません。

商品知識に詳しい人が、仕入れルールを標準化し、部門全体で共有できるとは限りません。

物流現場をよく知る人が、倉庫スタッフの育成、出荷ミス防止、業務改善、営業部門との調整まで担えるとは限りません。

管理職に必要なのは、個人として成果を出す力に加えて、人を動かす力、仕組みを作る力、問題を早期に発見する力、経営方針を現場に伝える力です。

1on1では、管理職候補に対して、「今できている仕事」と「これから担ってほしい役割」を分けて伝える必要があります。

たとえば、営業担当には「売上を作るだけでなく、若手営業の商談準備、価格交渉の進め方、顧客別採算の見方まで教えてほしい」と伝えます。

仕入れ担当には「自分だけが分かる仕入れ先情報を、他の社員も使える形に整理してほしい」と伝えます。

物流責任者候補には「出荷作業を進めるだけでなく、作業動線、誤出荷防止、繁忙日の人員配置まで考えてほしい」と伝えます。

管理職育成の1on1では、本人の強みを認めながら、次に求める行動を具体化することが大切です。

「あなたは仕事ができるから管理職をやってほしい」ではなく、「これからは自分の成果だけでなく、部門全体の成果を作る役割を担ってほしい」と伝えることで、本人の視座が変わりやすくなります。

 

3.1on1では管理職に必要な視点を段階的に育てる

管理職候補を育てる際、いきなり「部門全体を見なさい」「経営者視点を持ちなさい」と伝えても、本人は何をすればよいか分かりません。

特に商社・卸業界では、日々の受注、納期調整、見積作成、仕入れ確認、出荷対応、顧客問い合わせが多く、管理職候補が目の前の業務に追われやすい構造があります。

そのため、1on1では、管理職に必要な視点を段階的に育てる必要があります。

最初の段階では、自分の担当業務を安定して行い、報告連絡相談を確実にすることを確認します。

次の段階では、後輩や周囲のメンバーの状況に気づき、困っている人へ声をかけることを目標にします。

さらに次の段階では、部門全体の業務量、ミスの発生傾向、顧客別採算、在庫の動き、部門間連携の課題まで見るようにします。

1on1では、「最近、部門全体で気になっていることはありますか」「若手がつまずきやすい業務はどこですか」「営業と事務の連携で改善した方がよい点はありますか」と問いかけることが有効です。

こうした質問を続けることで、本人の視点は「自分の仕事」から「チームの状態」へ広がります。

管理職育成では、役職を与えてから育てるのではなく、役職を与える前から管理職視点を育てることが重要です。

1on1は、管理職候補が日々の実務を振り返り、視野を広げていくための育成機会になります。

 

4.営業管理職には売上だけでなく粗利と顧客別採算を見る力を育てる

商社・卸業界の営業管理職には、売上を伸ばす力だけでなく、粗利、顧客別採算、商品別採算、取引条件、納品負担まで見る力が求められます。

商社・卸業では、売上が増えていても、値引きが大きい、配送負担が重い、返品対応が多い、少量多頻度の納品が多い、社内対応工数がかかりすぎると、利益が残りにくくなります。

そのため、営業管理職候補への1on1では、「売れたかどうか」だけでなく、「利益が残る取引になっているか」「現場に過度な負担をかけていないか」を確認することが重要です。

たとえば、「売上は大きいが粗利が低い顧客はどこか」「値上げ交渉が必要な顧客はどこか」「営業事務や物流に負担が集中している案件はないか」「取引条件を見直すべき顧客はどこか」といった質問が有効です。

営業管理職は、顧客からの要望をそのまま社内に流すだけでは不十分です。

顧客満足、社内負担、利益率のバランスを取りながら、受けるべき要望と断るべき要望を判断する力が必要です。

1on1では、営業管理職候補に、案件ごとの判断理由を説明してもらうことが有効です。

「なぜその価格で提案したのか」「なぜその納期を約束したのか」「その取引は来期も続けるべきか」と聞くことで、本人の判断基準が見えます。

営業管理職候補の判断基準が経営方針とずれていれば、1on1の中で修正できます。

売上だけを追う営業から、利益と組織負担を見ながら顧客を育てる営業へ変えることが、商社・卸業界の管理職育成では重要です。

 

5.仕入れ・購買管理職には属人化をなくす力を育てる

商社・卸業界では、仕入れ・購買業務が特定の担当者に依存しやすい傾向があります。

どの商品をどこから仕入れるのか、どの仕入れ先なら急ぎに対応してくれるのか、どの商品は代替品があるのか、どの顧客にはどのメーカーが合うのかといった情報は、長年の経験に蓄積されます。

この経験値は会社の強みですが、担当者の頭の中にしか情報がない状態では、休職、退職、異動、繁忙時に業務が止まりやすくなります。

仕入れ・購買管理職候補への1on1では、本人の交渉力や経験だけでなく、情報を共有し、業務を仕組み化する力を育てることが重要です。

「自分しか分からない仕入れ先情報はありますか」「欠品時の代替ルートは整理されていますか」「営業が確認しやすい商品情報は整っていますか」「若手に引き継ぐべき仕入れ判断は何ですか」といった質問が有効です。

また、仕入れ・購買管理職は、営業部門と物流部門の間に立つ役割も担います。

営業は顧客要望を優先し、物流は安定した出荷を優先し、仕入れは供給と価格を調整するため、部門間で意見が分かれることがあります。

このとき仕入れ管理職には、単に商品を確保するだけでなく、顧客要望、仕入れ条件、在庫リスク、利益率を総合的に判断する力が求められます。

1on1では、難しい仕入れ判断があった案件を振り返り、「何を優先して判断したのか」「別の選択肢はなかったか」「次回に向けて共有すべき情報は何か」を一緒に整理します。

この対話を積み重ねることで、仕入れ・購買管理職候補は、個人技に頼る担当者から、部門全体の供給力を高める管理職へ成長しやすくなります。

 

6.物流・倉庫管理職には現場改善と部門間調整の力を育てる

商社・卸業界において、物流・倉庫部門は顧客満足を支える重要な現場です。

どれだけ営業が受注し、仕入れが商品を確保しても、入出庫、ピッキング、検品、梱包、配送手配が適切に行われなければ、顧客への納品品質は保てません。

物流・倉庫管理職には、作業を回す力だけでなく、出荷ミスを減らす力、倉庫動線を改善する力、繁忙時の人員配置を考える力、営業や事務と調整する力が求められます。

物流管理職候補との1on1では、「どの作業でミスが起きやすいか」「どの時間帯に出荷が集中するか」「営業からの急な依頼で現場が困っていることはないか」「棚割りや在庫表示で改善できる点はないか」といった具体的な質問が有効です。

特に中小規模の商社・卸会社では、物流現場の負担が見えにくいまま、営業都合で急ぎ対応が積み重なることがあります。

物流管理職がその不満を抱え込むと、現場スタッフのモチベーションが下がり、離職やミスにつながります。

1on1では、物流管理職候補が感じている現場負担を聞くだけでなく、それを会社としてどのように営業ルールや受注締め時間に反映するかを考えることが重要です。

また、物流・倉庫管理職には、現場スタッフの育成も求められます。

ピッキング精度、検品手順、安全確認、在庫管理、整理整頓などを、個人任せではなく標準化していく必要があります。

1on1を通じて、物流管理職候補に現場改善の視点を持たせることで、物流部門は単なる作業部門ではなく、顧客満足と利益を支える重要部門へ変わっていきます。

 

7.営業事務・業務管理職には正確性と改善提案力を育てる

商社・卸業界の営業事務や業務部門は、受発注、見積、請求、納期確認、顧客問い合わせ、システム入力、営業サポートなど、会社の業務品質を支える役割を担っています。

営業事務・業務管理職には、正確な処理を行う力だけでなく、業務量の偏りを把握し、ミスを防ぐ仕組みを作り、営業部門との役割分担を調整する力が求められます。

この役割は目立ちにくいものの、管理職として非常に重要です。

受発注ミス、請求漏れ、納期回答の遅れ、顧客からの問い合わせ対応の遅れは、会社の信用に直結します。

業務管理職候補への1on1では、「どの処理でミスが起きやすいか」「特定の人に業務が偏っていないか」「営業からの依頼でルール化すべきものはないか」「システムや帳票で改善できる点はないか」を確認します。

また、業務管理職には、部下の心理的負担にも気づく力が必要です。

事務職は、ミスがあると強く指摘されやすい一方で、日々正確に処理していることは当たり前と見られやすい職種です。

そのため、業務管理職候補には、部下の頑張りを認めること、ミスを個人の責任だけにせず仕組みで防ぐこと、営業との調整役になることが求められます。

1on1では、業務管理職候補に対して、「部下が困っている業務は何か」「ミスを減らすために仕組みで変えられることは何か」「営業に協力してほしいことは何か」を一緒に考えます。

正確性と改善提案力を兼ね備えた業務管理職が育てば、商社・卸会社の業務品質は大きく安定します。

 

8.1on1で部下育成の悩みを引き出す

管理職候補が最初につまずきやすいテーマの一つが、部下育成です。

商社・卸業界では、商品知識、顧客対応、見積、仕入れ、受発注、在庫管理、物流手順など、覚えるべきことが多くあります。

経験者から見ると当たり前のことでも、新人や若手にとっては理解しづらい業務が少なくありません。

管理職候補が「自分は見て覚えた」「何度もやれば分かる」と考えていると、部下は質問しにくくなり、成長が遅れたり、離職を考えたりする可能性があります。

1on1では、管理職候補に対して、部下育成で困っていることを具体的に聞く必要があります。

「新人がつまずきやすい業務はどこですか」「注意しても改善しない行動はありますか」「自分の教え方で変えられる点はありますか」「部下に任せきれていない業務はありますか」と問いかけることで、育成上の課題が見えやすくなります。

また、管理職候補が部下への不満を話した場合は、すぐに否定するのではなく、事実と解釈を分けて整理することが重要です。

「何が起きたのか」「本人にはどう伝えたのか」「相手はどう受け取ったのか」「次にどう伝えれば行動が変わるか」を一緒に考えます。

部下育成は、管理職が一人で自然に身につけるものではありません。

経営者や幹部が1on1を通じて、管理職候補の教え方、任せ方、声のかけ方を育てる必要があります。

 

9.管理職候補の孤立を防ぐ

管理職や責任者は、経営者と一般社員の間に立つため、孤立しやすい立場です。

商社・卸会社では、営業責任者は売上と粗利を求められ、物流責任者は出荷品質と現場負担を抱え、業務管理職は正確性とスピードを求められ、仕入れ責任者は価格と供給安定を求められます。

部下からは不満を聞き、経営者からは成果を求められ、顧客や仕入れ先からは調整を求められるため、管理職候補は精神的な負担を抱えやすくなります。

管理職が疲弊すると、部下への対応が雑になり、部門内の雰囲気が悪化し、結果として離職につながることがあります。

厚生労働省の「こころの耳」では、働く人や事業者に向けたメンタルヘルス情報や相談窓口が整理されており、職場で相談しやすい環境を整えることの重要性を考えるうえで参考になります。

1on1では、管理職候補に対して、「最近、抱え込んでいることはないか」「自分だけでは判断しづらい案件はないか」「部下との関係で困っていることはないか」「経営側に決めてほしいことはないか」と定期的に確認します。

管理職候補が相談できる状態を作ることで、現場の問題を早期に把握できます。

また、管理職候補が経営層に相談できる関係を持てれば、部下に対しても落ち着いた対応をしやすくなります。

管理職育成では、責任を任せることが必要ですが、任せた後に放置しないことが重要です。

1on1は、管理職候補を孤立させず、責任と支援のバランスを取るための仕組みです。

 

10.1on1で経営方針を現場に落とし込む

管理職は、経営方針を現場に伝える重要な役割を担います。

しかし、経営者が方針を発信しても、管理職が十分に理解していなければ、現場には正しく伝わりません。

商社・卸会社では、粗利改善、価格改定、在庫適正化、顧客別採算管理、物流効率化、営業活動の標準化、業務DX、若手育成など、経営方針が多岐にわたります。

これらを現場に浸透させるには、管理職自身が「なぜ今それを進めるのか」を理解している必要があります。

1on1では、経営者や幹部が管理職候補に方針を一方的に伝えるだけでは不十分です。

「今期、会社として最も重視していることは何だと思うか」「部下に説明するなら、どのように伝えるか」「現場で反発や混乱が起きそうな点はどこか」と問いかけ、本人の理解度を確認します。

たとえば、価格改定を進める場合、営業管理職がその必要性を理解していなければ、顧客へ自信を持って説明できません。

在庫削減を進める場合、仕入れや物流の管理職が背景を理解していなければ、欠品リスクを恐れて従来通りの発注を続ける可能性があります。

1on1で経営方針と現場実態をすり合わせることで、管理職候補は経営と現場をつなぐ役割を担いやすくなります。

管理職育成における1on1は、単なる個人面談ではなく、経営方針を現場に浸透させるための重要な接点です。

 

11.任せる範囲を段階的に広げる

管理職育成では、研修や面談だけでなく、実際に任せる経験が必要です。

ただし、いきなり大きな顧客、部門全体、複数名の部下、価格交渉、クレーム対応を任せると、本人が負担を感じ、失敗したときに自信を失う可能性があります。

そのため、1on1では、管理職候補に任せる範囲を段階的に広げることが重要です。

最初は、朝礼での共有、若手への業務説明、営業同行後の振り返り、簡単な在庫確認、出荷ミス防止のチェックなど、小さな役割から始めます。

次に、小規模チームの段取り、特定顧客の対応方針、特定商品の仕入れ判断、倉庫改善の進行、業務マニュアルの作成などを任せます。

さらに、部門の数値管理、部下の育成計画、顧客別採算の改善、部門間会議の進行、価格改定の提案などへ広げていきます。

1on1では、任せた役割について必ず振り返ります。

「やってみて難しかったことは何か」「次回はどこを改善したいか」「部下や他部門の反応はどうだったか」「会社からどのような支援が必要か」を確認します。

任せるだけでは、経験は単なる負担になることがあります。

任せた後に1on1で振り返り、学びに変えることで、管理職候補は着実に成長しやすくなります。

 

12.管理職育成を評価制度と連動させる

1on1で管理職育成を進める場合、評価制度との連動も重要です。

管理職候補に部下育成、部門間調整、業務改善、粗利管理、在庫適正化を求めても、それが評価や処遇に反映されなければ、本人の納得感は高まりません。

商社・卸業界では、営業売上や処理件数のような成果は見えやすい一方で、部下への声かけ、業務標準化、ミス防止、部門間調整、若手育成といった管理職としての貢献は見えにくい傾向があります。

そのため、管理職育成では、評価項目を明確にする必要があります。

評価項目には、部下育成、顧客別採算改善、粗利率改善、業務改善提案、在庫精度、出荷ミス削減、部門間連携、マニュアル整備、若手定着、経営方針の浸透などを入れることが考えられます。

中小企業庁の2025年版中小企業白書では、人材育成の取組が定着率や業績向上に寄与する可能性があり、人事評価制度による明確・公正な評価が定着率を高める可能性も示されています。

1on1では、これらの評価項目について、本人がどの程度できているか、次に何を伸ばすべきかを確認します。

1on1を毎回の査定面談にする必要はありません。

しかし、1on1で話している成長課題が評価制度とつながっていることは重要です。

管理職候補が「何を頑張れば管理職として評価されるのか」を理解できれば、行動は変わりやすくなります。

 

13.人材開発支援制度も視野に入れて育成を設計する

管理職育成は、現場経験と1on1だけで完結するものではありません。

必要に応じて、営業研修、商品知識研修、マネジメント研修、物流改善研修、業務DX研修、財務・粗利管理研修、部下育成研修を組み合わせることが有効です。

厚生労働省の人材開発支援助成金では、人材育成支援コースなどが設けられており、雇用する被保険者に対して職務に関連した知識・技能を習得させる訓練を行う場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度が紹介されています。

商社・卸会社の管理職候補には、商品知識や営業スキルだけでなく、数値管理、原価意識、部門間調整、部下育成、業務改善、IT活用などを体系的に学ばせる必要があります。

ただし、研修を受けさせるだけでは、現場での行動は変わりません。

1on1では、研修で学んだことを現場でどう活かすかを確認する必要があります。

「研修で印象に残ったことは何か」「自分の部門で使えそうな考え方は何か」「来月までに実践することは何か」と聞くことで、学びを行動につなげられます。

管理職育成では、研修、現場経験、1on1を組み合わせることが重要です。

研修で知識を得て、現場で実践し、1on1で振り返る流れを作ることで、管理職候補は実務に根ざした成長をしやすくなります。

 

14.1on1を経営者だけで抱えず、幹部・既存管理職にも広げる

中小規模の商社・卸会社では、経営者が管理職候補と直接1on1を行うこともあります。

初期段階では、経営者が直接対話することで、会社の方針や期待を伝えやすくなります。

しかし、組織が拡大してくると、経営者だけですべての1on1を続けることは難しくなります。

そのため、1on1を幹部や既存管理職にも広げ、会社全体で管理職育成を進める仕組みにする必要があります。

ただし、1on1を任せる側の管理職自身が、部下の話を聞く力や育成する力を持っていなければ、面談が単なる業務確認や注意の場になってしまいます。

そのため、まずは1on1を実施する管理職に対して、面談の目的、質問の仕方、聞き方、記録方法、改善につなげる方法を教える必要があります。

また、1on1で得た内容を共有する際には、個人のプライバシーに配慮しながら、組織改善に必要な情報だけを整理することが大切です。

たとえば、「営業事務に業務が集中している」「物流部門で急ぎ出荷への不満が多い」「若手営業が価格交渉に不安を感じている」といった傾向は、個人名を出さずに経営課題として扱えます。

1on1を会社の文化として根付かせるには、経営者が最初に見本を示し、その後に幹部や管理職へ広げる流れが有効です。

管理職育成の1on1は、一部の人だけが行う特別な面談ではなく、組織全体で人を育てる仕組みにしていくことが大切です。

 

15.経営者・幹部が確認すべき管理職育成の指標

1on1で管理職育成を進めるには、実施状況や成長状況を数字でも確認する必要があります。

感覚だけで「育っている」「まだ任せられない」と判断すると、育成が属人的になりやすくなります。

経営者・幹部が確認すべき指標としては、管理職候補者数、1on1実施率、部門責任者任命数、若手社員の定着率、部下の離職率、改善提案件数、出荷ミス件数、受発注ミス件数、顧客別粗利、在庫差異、残業時間などがあります。

たとえば、管理職候補が担当するチームで若手の定着率が高まっていれば、育成力が向上している可能性があります。

改善提案が増えていれば、管理職候補が自分の業務だけでなく、部門全体を見る視点を持ち始めていると考えられます。

出荷ミスや受発注ミスが減っていれば、業務管理職や物流管理職の仕組みづくりが進んでいる可能性があります。

一方で、管理職候補を任命した部門で離職、残業、ミス、クレームが増えている場合は、本人への支援や役割設計を見直す必要があります。

1on1の成果は、すぐに数字に表れるものばかりではありません。

しかし、育成対象者の行動変化、部門の安定度、部下の定着、改善提案、業務品質を継続的に見れば、管理職育成の進捗を把握しやすくなります。

管理職育成を経営課題として扱うためには、1on1の実施と成果を見える化することが重要です。

 

16.結論・まとめ

中小規模の商社・卸業界で管理職育成を推進するには、営業成績が高い人、商品知識に詳しい人、現場経験が長い人に役職を与えるだけでは不十分です。

管理職には、売上だけでなく粗利を見る力、仕入れ情報を共有する力、物流現場を改善する力、営業事務の負担を理解する力、部下を育てる力、部門間を調整する力が求められます。

1on1は、管理職候補の悩みを聞くだけの面談ではありません。

経営者や幹部が、管理職候補に対して期待する役割を伝え、実務を振り返り、判断基準を共有し、部下育成や部門間調整の力を育てるための対話です。

営業管理職には、売上だけでなく粗利と顧客別採算を見る力を育てる必要があります。

仕入れ・購買管理職には、属人化をなくし、仕入れ判断を組織で共有する力を育てる必要があります。

物流・倉庫管理職には、現場改善と部門間調整の力を育てる必要があります。

営業事務・業務管理職には、正確性と改善提案力を育てる必要があります。

さらに、管理職候補は経営者と一般社員の間で孤立しやすいため、1on1を通じて定期的に悩みや判断課題を確認することが重要です。

1on1で出た課題は、業務改善、評価制度、研修計画、権限委譲、部門間連携に反映させる必要があります。

中小規模の商社・卸会社が持続的に成長するためには、経営者だけに依存せず、部門を任せられる管理職を増やすことが不可欠です。

1on1を継続的に活用することで、管理職候補の視座を高め、部門間連携を強化し、社員が育つ組織づくりを進めることができます。

 

17. 参考資料

中小企業庁|2025年版 中小企業白書(HTML版)

中小企業庁|2025年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 第1章 第4節 人材戦略

中小企業庁|2025年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 第2章 第2節 スケールアップに向けた課題

中小企業庁|2025年版 中小企業白書(HTML版) 第2部 第2章 第4節 まとめ

中小企業庁|2025年版 中小企業白書の概要

厚生労働省|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

厚生労働省|人材開発支援助成金

厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース、教育訓練休暇等付与コース、人への投資促進コース、事業展開等リスキリング支援コース)申請書類

 

18. 人材採用・募集活性化・1on1・人材定着・離職防止・人的資本経営などに関する無料相談とお問い合わせ

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