【2026年最新】建設業界の人材採用の振り返りと今後の動向・展望
2026.01.29
1. 人手不足倒産の現状:建設業を襲う「現業職」・「熟練技術者」不足の深刻度
建設業界は、あらゆる業界の中でも特に慢性的な人手不足に直面しており 、これは日本社会全体の大きな課題となっています。2024年4月の改正労働基準法の適用(いわゆる「2024年問題」)を経て、この課題はさらに深刻化し、経営上の最大級の問題として顕在化しています。
1.1. 中小企業で特に深刻な「現業職」不足
中小企業における経営課題として、「人手不足」が「原材料価格の高騰」「人件費の増加」と並び、特に重視されています。中でも建設業界は人手不足が顕著で 、特に「建設作業者」などの現業職の不足感が否めない状況です。帝国データバンクの調査によると、中規模企業では85.7% 、小規模事業者では88.0% が、現業職の不足を感じていることが示されています。
1.2. 経営課題のトップに迫る「人材確保の困難さ」
独立行政法人中小企業基盤整備機構の調査による建設業の従業員過不足DI(今期の水準)を見ると、2010年以降の推移では、すべての地域において年々「人手不足」感が強まっていることがわかります。また、経営上の問題点として、直近の調査では「材料価格の上昇」に次いで「従業員の確保難」が第2位、「熟練技術者の確保難」が第3位となっており 、人手不足、特にベテラン技術者の確保が喫緊の課題であることが明らかです。
1.3. 働き方改革の裏側で増加する「人手不足倒産」
2024年問題(働き方改革への対応)の影響が顕在化する中で、「人手不足倒産」の件数は過去最多の350件に上り 、特に「建設業」が111件と最も多く、全体の3割を占めています。人手不足が常態化し、従業員の確保が困難となることで、企業の存続そのものが危ぶまれる事態となっています。
2. 根本原因としての高齢化:55歳以上約37%が示す技術承継の急務
建設業界の構造的な課題として、日本全体の労働力不足(生産年齢人口の減少) に加え、業界特有の高齢化が深刻度を増しています。
2.1. いびつな年齢構成と2025年問題の本格化
建設業就業者の年齢構成は、55歳以上が約37% 、29歳以下が約12% といういびつな構造が続いています。この状況は、2025年問題(団塊世代の大量離職)のピークと重なり 、ベテランが持つ技術・技能の承継は「待ったなしの状況」です。シニア人材を「若手の教育・メンター役」として活用する仕組みづくりや、技術や知見を動画・AIなどでドキュメント化し残し伝える方法に投資すべきです。
2.2. 若手・高卒採用における高い早期離職率
若手入職者の早期離職率が高いことも大きな問題です(高卒採用で約4割)。ベテランの離脱と若手の定着難が重なり、技術承継への対応が急務となっています。
2.3. 転職理由に見る「待遇」と「将来不安」
厚生労働省の「雇用動向調査」によると、転職した入職者が前職を離職した理由として、「給料等収入が少ない」 、「職場の人間関係が好ましくない」 、「労働時間、休日等の労働条件が悪い」 などが挙げられています。特に前年と比較して、「給与への不満」や「会社の将来への不安」が増大していることが示されており 、適切な待遇や将来の見通しを提供する必要性を示唆しています。
3. 2026年の採用はDXが前提条件:「BIM/CIM」導入で若手を惹きつける魅力発信
2026年の建設業界における採用時流として、「DX(BIM/CIMやICT、AI活用)導入」は、もはや採用における前提条件となると予測されています。
3.1. DXは業務効率化と魅力発信の核
国土交通省の調査によると、BIM/CIMの普及率はまだ約48%ですが、公共工事や大手案件ではBIM必須化が3割に達しています。DXの導入は、単に「業務効率化」を図るだけでなく、若手求職者に対する「最先端の技術・ノウハウが学べる」という「魅力」を発信する核となります。
3.2. デジタル採用戦略における「働き甲斐」の訴求
デジタル採用戦略における「受け皿構築」(採用特設サイト)では、求職者を惹きつけるコンテンツとして、「働き甲斐」の要素を強調すべきです。具体的には、企業理念・ビジョン、自社の強みや特徴、詳細な事業内容と仕事内容、そして施工実績などが該当します。
4. 採用競争を勝ち抜く「ベースアップ(基本給)」戦略:激化する賃金改善の動向と対応策
2026年は、採用市場において「処遇改善」から一歩進み、「ベースアップ(ベア)競争」へと激化すると予測されています。
4.1. 処遇改善から「ベア競争」への移行
残業規制によって年収が減る懸念がある中、大手ゼネコンは平均10%超の賃上げや、大卒初任給30万円といった具体的な処遇改善策を打ち出しています。帝国データバンクの調査によると、2025年度は企業全体の56.1%がベアを予定しており(過去最高) 、この流れに乗れない企業は採用市場から脱落するとされています。
4.2. 「働きやすさ」の標準化
長時間労働の是正(2024年問題への対応)を受け、「多様な働き方」の導入が「標準化」されます。完全週休二日制の導入や、DX活用による現場事務所と本社のテレワーク連携、フレックスタイム制の導入、男性の育児支援などが含まれます。求職者から選ばれるためには、「働きやすさ」が標準装備でなければなりません。
4.3. デジタル採用戦略における「働きやすさ」の訴求
デジタル採用戦略の「受け皿構築」では、「働きやすさ」のコンテンツを充実させるべきです。以下の情報を明確に提示することで、求職者の不安を払拭し、魅力を訴求します。
福利厚生と待遇
社内環境
仕事スケジュール(休日数、労働時間など)
キャリアステップと評価制度
研修プログラム(リスキリングを含む)
5. 活用本格化!特定技能外国人採用成功の鍵:受入環境整備と多文化共生への投資
国内の生産年齢人口の減少と建設業の有効求人倍率の高さ(常用・除パートで5.06倍 )を背景に、外国人材の活用は必須となりつつあります。
5.1. 特定技能の受け入れ拡大と公的支援
政府は特定技能外国人の受入枠を5年間で82万人と設定し、建設分野でも8万人の受入枠を設けるなど、外国人材の活用の流れは今後さらに加速すると見込まれます。国土交通省も「外国人材とつくる建設未来賞」を設けるなど、活用を後押ししています。
5.2. 成功に不可欠な受入環境整備
外国人材の活用を本格的に進めるには、受け入れる環境整備を本格化するタイミングに来ています。特に、「特定技能」や「技人国」(技術・人文知識・国際業務)などの在留資格を持つ外国人材を受け入れるにあたり、企業は以下の点に投資すべきです。
日本語教育の提供
生活支援の充実
文化や習慣の違いへの深い理解とサポート
これらの環境整備が、外国人材の定着率向上に直結します。
6. 採用活動のデジタル化とオムニチャネル戦略:「現場のリアル」を伝える動画・SNS活用法
採用活動において、デジタル化は当たり前であり、「採用発信力/オムニチャネル」のない会社は淘汰されると予測されます。
6.1. 自社採用特化型ホームページの構築
求人プラットフォームや検索エンジンだけでなく、「自社の採用特化型ホームページ」の構築と発信が不可欠です。これは、求職者を惹きつける「受け皿」として機能します。採用特設サイトでは、「働き甲斐」「働きやすさ」「安心感」のコンテンツを徹底的に充実させることがポイントです。
6.2. SNS・動画を活用した「導線設計」
採用はマーケティングであり、「導線設計(認知・集客)」と「受け皿構築(応募・魅力付け)」の両輪を回す必要があります。SNSや動画の活用を通じて、以下のような「現場のリアル」を視覚的に発信し、採用サイトへ誘導します。
現場の1日や仕事紹介動画
AI・DXツールを活用した仕事風景
若手/女性社員インタビュー
特に、BtoB業界である建設業の「何をしているかわからない」というイメージを払拭することが重要です。
6.3. オムニチャネル(多経路)での集客
中途採用では、転職エージェント、専門求人サイト、リファラル(社員紹介)など、あらゆる経路(オムニチャネル)を活用することが必須です。これは、これまでの採用手法(フリーペーパー、地元求人誌、新聞広告など)も、使えるものは全て活用するという考え方に基づいています。
7. 内定承諾率を高める「採用CX(候補者体験)」設計:応募からオンボーディングまでの道のり
採用難の時代、応募者(候補者)が選考プロセスを通じて「この企業を受けて良かった」と感じる「採用CX(候補者体験)」の重要性が高まっています。
7.1. 選考プロセス全体の「魅力付け」
応募後のレスポンスの迅速化(AIチャットボット活用など) 、選考プロセスのスムーズ化(Web面接活用など) に加え、面接を単なる「評価」ではなく「魅力付け」の場にすることが重要です。面接時でも、責任者自らが求職者の望むキャリアや条件と向き合い 、「ここで必ず働きたい」と感じさせる体験を提供することが内定承諾率を高めます。
7.2. 定着を見据えたオンボーディングの設計
採用は「入社まで」で終わらせず、入社後の「オンボーディング」(定着・即戦力化支援)までを設計することが必須です。若手入職者の早期離職は採用コストを無駄にするため 、「定着」は「採用」以上に重要なテーマとなります。入社後のフォロー体制、入社後研修、初期教育体制の構築が不可欠です。
8. リスキリングによる人材育成の強化:DXと連動した人的資本経営の実現
採用難の今、重要なのは既存社員の定着と能力向上です。2026年は「人材育成」から、より具体的な「リスキリング(学び直し)」へと焦点が絞られます。
8.1. リスキリング体制の構築
DXと連動したリスキリング体制の構築は、人的資本経営の中核となります。具体的な取り組みとしては、以下の例が挙げられます。
ベテランへのデジタルスキル(PC、タブレット操作など)の学習
現場監督へのAIやドローン技術の学習
現代における管理職のためのマネジメント理論の学習
企業は、研修費用補助や学習時間確保などの支援体制を構築すべきです。
8.2. 経営戦略と人事戦略の連動
人材を単なる「コスト」ではなく「投資すべき資本」とみなす「人的資本経営」の視点を持ち、採用・育成・環境整備への「投資」が将来の企業価値をいかに高めるかを計画に落とし込むことが重要です。数カ年の中期経営計画に連動した「中途・新卒の人員計画」を明確化し 、売上、利益、従業員数だけでなく、離職率や生産性、社員の平均年収といった指標を連動させることが求められます。
9. 若手・女性の定着率を上げる「働きやすさ」の標準化:完全週休二日制と女性活躍推進
人材を惹きつけ、特に早期離職率が高い若手や、労働力として重要な女性の定着を図るためには、働きやすい環境づくりが不可欠です。
9.1. 女性活躍推進(ハードとソフトの両輪)
従事者が減少する中で、女性の現場従事者・技術者が活躍できる環境づくりは、他社との差別化要因となります。具体的な環境整備は、ハードとソフトの両面で進められています。
女性専用の更衣室やトイレの設置(ハード面)
育児休暇や時短勤務制度の導入(ソフト面)
女性の現場監督・管理職への登用
9.2. 新卒採用における「惹き付け型」へのシフト
新卒採用では、学生に「選ばれ、そして選べる企業」となるため、「選考型採用」から「惹き付け型採用」へのシフトが必須です。インターンシップの質を向上させ、施工管理業務体験やドローン操作など、「建設業のリアル」を体感させるプログラムが重要です。また、大手ゼネコンが「大卒初任給30万円」を打ち出す中 、自社の初任給と、入社後のキャリアパス・評価基準・教育体系・年収モデルを明確に提示し、将来の不安を払拭すべきです。
10. 採用の決め手は企業の「パーパス(存在意義)」:給与・休日同水準時代の最終訴求ポイント
給与や休日(働きやすさ)といった待遇が同水準になった場合、最後に問われるのは、「何のために働くか」(やりがい・働きがい)です。
10.1. ビジョンとパーパスの発信
自社が地域のインフラをどう支えているか、最新技術やDX・AIなどを用いて建設業をどう変革しようとしているか、といった「ビジョン」や「パーパス(存在意義)」の発信が、採用の決め手となります。これは、採用ブランディング戦略の中核です。
10.2. 中途採用における計画性と魅力的な提示
新卒採用の倍率が高騰する中、中途採用(特に即戦力となる経験者)の計画的な採用が、企業の事業計画を支える上で必須となります。
中途採用成功のためには、慢性的な課題である「経験者が集まらない」という状況に対し、以下の点を詳細に掘り下げ、求職者へ分かりやすく魅力的に伝える必要があります。
必要人数の具体化と必須・歓迎能力(経験)の具体化
必要とされるポジションの具体的な要件
任された際の待遇やステップアップ(ポジションへの将来の期待値)
さらに、求める人材像(ペルソナ)を明確にし、そのペルソナに響く処遇・条件(例:○○○経験者には年俸XXX万円)を提示することが重要です。
11.まとめ
本コラム記事は、株式会社船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングの「建設業×採用 時流予測レポート 2026」の内容に基づき、2026年に向けた建設業界の採用戦略と動向を概説しました。人材確保はもはや経営戦略そのものであり、単なる募集活動に留まらず、デジタル化、待遇改善、そして企業としての存在意義の発信を通じた総合的な戦略が求められています。
12.参考資料
株式会社船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング「【建設業×採用】時流予測レポート2026」
中小企業庁 調査室『2025年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要(2025年7月)』
独立行政法人 中小企業基盤整備機構『第181回中小企業景況調査(2025年7-9月期)のポイント〈建設業編〉』
内閣官房『将来推計人口(令和5年推計)の概要ー日本の人口の推移』
厚生労働省『一般職業紹介状況(令和7年8月分)』
一般社団法人 日本建設業連合会『4. 建設労働 | 建設業の現状 建設業就業者の高齢化の進行』
13.船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングがお手伝いできること
貴社の事業拡大を支援するため、船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングでは以下のコンサルティングサービスを提供しています。
13-1. 個別コンサルティング: 建設業界向け採用力向上実行支援
外部環境調査と戦略策定(フェーズ1):ターゲット選定(業界・職種・エリア)、求職者マーケット分析、競合分析を実施し、最適な営業・求職者獲得戦略および差別化コンセプトを設計します。
各種ツールの納品(フェーズ2):法人営業支援ツール(トークスクリプト、提案資料、契約書テンプレート)や、人材募集運用ツール(求人原稿、広告運用マニュアル)、求職者マッチングツールなど、実践ツールを提供します。
実行支援(月次支援):策定した戦略を実行するための実務的支援を月1回行い、営業ロープレや求職者対応の研修、KPIマネジメントを通じて事業立ち上げをサポートします
13-2. 集合型定期勉強会: 採用力向上経営フォーラム
全国トップクラスのゲスト講師や専門コンサルタントによる成功ノウハウの共有。
実践企業同士のリアルな情報交換会への参加。
会員限定データベースを通じた過去の講演動画や資料の入手。
新規参入から事業拡大まで、一気通貫でサポートいたします。
⇒ 採用力向上経営フォーラムの詳細・無料お試し申込はこちら
14.【船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング制作】「建設業界×採用時流予測レポート2026」
船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング制作の「建設業界×採用時流予測レポート2026」を無料でダウンロードいただけます。この機会にぜひご覧くださいませ。
