【2026年最新】ビルメンテナンス業界経営の振り返りと今後の動向・展望
2026.01.29
1. ビルメンテナンス業界の現状分析:建設投資の堅調な伸びと市場環境の変化
1-1. 建設投資の推移に見る市場の「追い風」
ビルメンテナンス業界を取り巻く市場環境は、国内建設投資の堅調な成長によって大きな追い風を受けています。
国内建設投資は継続的に成長を遂げており、2025年度には約76兆円と前年度比3.1%増が見込まれています。
特に2026年は、インフラ老朽化対策や防災・減災への投資が推進されることにより、一段の成長が期待されます。
建設投資の動向は、内閣官房「第1次国土強靱化実施中期計画」などの政策に基づき、民間非住宅や建築補修(改装・改修)の分野においても活発化が見られます。
1-2. 経済環境の二つのシナリオと業界への影響
内閣府の中長期試算によると、経済全体の実質GDP成長率に関して二つのケースが示されており、それぞれビルメンテナンス業界に異なる影響を与えます。
成長移行ケース:賃上げと投資拡大が進むことで、経済全体の実質成長率が1%台半ばへ回復するシナリオです。この場合、ビルメンテナンス業界でも人件費の上昇が継続する一方、設備投資や省人化投資の需要が増加する見通しです。
過去投影ケース(低成長シナリオ):賃上げの停滞とコスト圧迫が続くことで、現場人員の確保難が長期化する懸念があります。
2. 人手不足の深刻化と高齢化対策:清掃従事者の有効求人倍率と採用・定着の課題
2-1. 現場人員の確保が困難な状況の継続
ビルメンテナンス業界、特に現場を支える清掃従事者の確保は、全職種平均を上回る有効求人倍率が示す通り、極めて困難な状況が続いています。
清掃従事者の有効求人倍率は1.27倍であり、全職種平均の1.20倍を上回っています(出典:厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和7年8月分))。
一方で、居住施設・ビル等管理職種の有効求人倍率は0.91倍と低調傾向にあります。全体として、現場人員の確保難は依然として業界の喫緊の課題であり、採用・定着対策の強化が急務となっています。
2-2. 現場を蝕む深刻な高齢化と技能承継の危機
清掃従事者の年齢構成を見ると、高齢化の進行が顕著であり、今後の人員確保と技能承継に対する懸念が高まっています。
清掃従事者において、65歳以上が占める割合は38.4%と突出して高く、全産業平均の13.7%を大きく上回っています(出典:総務省統計局「令和6年労働力調査」を加工して作成)。
60代も含めると、清掃従事者の約半数近くが高齢層で占められており、若年層の割合は著しく低水準です。
この急速な高齢化に対応するため、今後の人員確保や技能承継に向けた仕組みづくりが喫緊の課題となっています。
3. 「LTV最大化」が鍵:顧客生涯価値を向上させるための経営戦略
3-1. 縮小市場における成長戦略としてのLTV
対象顧客数の減少と人手不足による供給力低下が起きているビルメンテナンス市場において、成長戦略の鍵はLTV(顧客生涯価値)の最大化にあります。
LTVは「顧客の年間取引額 × 顧客の継続年数」で計算されます。
LTVを高めるためには、いかに別サービスを追加受注し、年間取引額を増やすか。
そして、いかにクレームを起こさず高品質なサービス(人)を提供し、顧客との関係を長期化させるか(継続年数を延ばすか)が重要です。
提供サービスの幅を広げ、契約更新率を高め、顧客満足度を維持することが、ビルメンテナンス業の持続的成長に直結します。
3-2. 既存顧客からの追加受注を増やす商品戦略
LTVを構成する「顧客の年間取引額」を向上させるためには、既存顧客に対する戦略的なサービス領域の拡大が求められます。
サービス領域の拡大:既存顧客に対しては、清掃から設備管理へ、または設備管理から清掃へとサービス領域を拡大する戦略を取るべきです。
総合管理化の推進:定期清掃から日常清掃など、ニーズに合わせて付加提案を行い、既存取引先のシェア拡大と総合管理化を進めることが重要です。
4. 成長市場を狙う:オフィス・ホテル関連の需要拡大と地方商圏の成長可能性
4-1. ターゲットマーケットの選別と集中
ビルメンテナンスの需要は顧客分野によって明暗が分かれており、市場全体としては減少傾向にあるため、成長分野の「選択と集中」が求められます。
①ホテル・宿泊施設関連:インバウンド需要が追い風となり、堅調から拡大基調にあります。
②オフィスビル・事務所関連:堅調から拡大基調にあります。
③介護・療養施設関連:市場の拡大が右肩上がりで、狙い目マーケットではありますが、小粒な事業所が多く、大きな売上にならない可能性もあります。
④住宅・マンション関連:横ばい傾向です。都市部では増加の可能性もありますが、全国的には人口減による需要低下が予想されます。
⑤学校・教育施設関連:横ばい傾向です。少子高齢化を考えると、今後も施設が増加する可能性は極めて低いです。
⑥官公庁舎・自治体関連:市場全体として縮小傾向にあり、新規投資や拡大には慎重な判断が求められます。
4-2. 地方商圏における成長の可能性
市場のポジショニングマップによると、成長性が高いとされるオフィス関連やホテル関連であっても、地方商圏において市場が成長する可能性は低いと予測されています。
5. 法改正を商機に:2025年4月施行の建築物省エネ法と設備入れ替え需要
5-1. 建築物省エネ法の適合義務拡大
2025年4月より、建築物省エネ法に基づく省エネ基準への適合義務が拡大されています。
2025年4月からは、これまで中規模ビル(300㎡以上)のみだった適合義務が、床面積300㎡未満のビル・住宅を含む全ての建築物に適用されています。
これに伴い、主に設備面などで省エネ基準に適応したものとなるよう、設備の入れ替え需要などが生じています。
この改正は、全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け、省エネ性能の底上げを図るものです(出典:国土交通省「改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料」)。
※法律の詳細な解釈や個別判断は行わず、一般的な内容をご紹介しています。
5-2. 省エネ診断によるクロスセル・アップセル営業
建築物省エネ法対応などの法改正を切り口とした提案は、顧客の課題解決と同時に自社の付加価値を高める有効なチャンスとなります。
課題提案の具体化:定期訪問時に、法改正への対応や改善提案を行うことで、顧客との関係を深め、解約防止と追加受注の両立を図ります。
提案内容の文書化:提案内容を「省エネ診断提案書」などとして文書化することで、提案力・営業品質の標準化・平準化を実現します。
総合管理への移行支援:省エネ診断のサポートなどを通じて、設備保守への移行を促し、ワンストップサービス化の推進に繋がります。
6. 賃金上昇への対応:最低賃金の引き上げと価格転嫁・効率化の必要性
6-1. 過去最高水準の最低賃金引き上げ率
最低賃金の引き上げ率は2021年以降急上昇しており、2025年度には6.3%増と過去最高水準に達しました。
最低賃金の引き上げ率は、2025年度には6.3%に達する見込みです。
今後も賃上げと物価上昇(消費者物価上昇率、名目賃金上昇率)が並行して進む見通しです。
6-2. 人件費上昇を前提とした経営構造への転換
ビルメンテナンス業界では、人件費上昇を前提とした以下の経営施策が必須となります。
価格転嫁の徹底:人件費上昇を前提とした価格転嫁と、コスト効率化が必須となります。
効率化の推進:業務効率化、特に現場作業の省人化・省力化に向けた投資の需要が高まります。
7. 「採用・育成・定着」のサイクル構築:人的資本経営による競争優位性の確保
7-1. 人材の採用・育成・定着の経営課題化
ビルメンテナンス業では、“人”こそ最大の経営資源であり、商品・サービスです。
採用・育成・定着のサイクルを経営のすぐそばに置き、経営課題として管理する体制が重要です。
人材力の強化は、LTV(顧客生涯価値)の最大化や新たなサービス創出にも直結し、持続的な競争優位性を生み出します。
7-2. 採用活動の全体設計による効率化
採用は「WEBフェーズ(集客・営業)」と「リアルフェーズ(クロージング)」の連動が鍵となります。
WEBフェーズ:求人特化型検索エンジンやWEB求人媒体などを活用して集客し、採用サイトで受け皿を整備します。
リアルフェーズ:説明会や職場体験などで納得感を高め、面接・採用・定着までを一貫して設計することで、採用効率と定着率を同時に高められます。
8. AI活用による現場のDX:清掃マニュアル作成と多言語化で品質を均一化
8-1. AIを活用したマニュアル作成と属人化の解消
現場の属人化を解消し、誰でも同じ品質を提供できる体制を構築するためには、AIを活用したマニュアル作成の推進が有効です。
マニュアル作成の効率化:ChatGPTを活用してマニュアルを自動生成・整理し、Gamma(ガンマ)でわかりやすくビジュアル化することで、文書作成や更新作業を効率化します。
品質の均一化:現場での教育や引き継ぎを標準化し、属人化の解消と業務品質の均一化を実現します。
8-2. 多様な人材に対応する多言語マニュアルの整備
清掃手順マニュアルの整備は不可欠であり、外国人スタッフの増加に対応した多言語化も進めるべきです。
多言語対応:外国人スタッフ向けに、英語、ベトナム語、中国語などの多言語版マニュアルの整備を進めていきましょう。
作成のポイント:誰が見ても同じ手順で作業できるよう、平易な言葉と安全ポイントの明示が重要であり、翻訳においてはその国の文化に配慮した自然な表現を心がけることが求められます。
9. リソースを集中:ABC分類に基づく重点顧客への戦略的アプローチと追加受注
9-1. 既存顧客のABC分類による重点管理
限られたリソースで既存顧客のLTVを最大化するため、全顧客をA・B・Cの3ランクに分類し、重要度に応じた戦略的な対応を行うことが重要です。
A顧客(全顧客の20%、売上の60%):優先度★★★(最優先)。四半期訪問、経営層との関係構築など、関係強化を行います。
B顧客(全顧客の30%、売上の30%):優先度★★(A顧客化を狙う)。追加サービス提案、契約拡大など、追加提案を行います。
C顧客(全顧客の50%、売上の10%):優先度★(解約防止のみ)。効率的な品質維持を最小コストで実施します。
9-2. クロスセル・アップセルによる年間取引額の拡大
既存顧客からの追加受注を増やし、年間取引額を拡大するため、定期訪問時に課題提案や改善提案を行います。
提案の機会:定期訪問は、顧客との関係を深め、解約防止と追加受注の両立を図るための重要な機会です。
提案内容:省エネ法対応などの法改正を切り口とした提案は有効であり、顧客の課題解決と同時に自社の付加価値を高めます。
文書化:提案内容を「省エネ診断提案書」などとして文書化することで、提案力・営業品質の標準化・平準化を実現します。
10. 採用効率を劇的に改善:ペルソナ策定と求人特化型検索エンジンの活用事例
10-1. 求める人物像(ペルソナ)の策定と求人展開
採用活動を効率化し、「定着する人材」を効率的に採用するためには、まず「自社で活躍できる人物像」=ペルソナの策定が重要です。
ペルソナ策定:年齢、経歴、家族構成などの基本情報に加え、転職で求める条件(給与、休日、柔軟な働き方、社風など)を整理することで、ターゲットが明確になります。
モデルの設定:既存の優秀社員や直近の採用成功者をモデルに設定すると、精度が高まります。
訴求力の向上:ペルソナが共感する働き方やメリットを求人原稿に反映させることで、「質の高い採用」を実現できます。
10-2. 注力すべき費用対効果の高い採用手法
時代とターゲットに適した採用手法を駆使し、費用対効果の高い採用活動を実現させましょう。
求人特化型検索エンジン + ATSサービス:パート・アルバイトや事務スタッフ、営業等の内勤人材含めて広く活用可能であり、複数の導線に同時に展開することで、より反響アップが見込めます。
スポットワーカーサービス:「朝の数時間だけ」「昼間のこの時間帯のみ」といったビルメン独自の条件での募集に最適です。
オファー型サービス:資格職や優秀な営業等の内勤人材を採用するのに必須の採用手法であり、中小企業でも活用のチャンスが大きいと言えます。
10-3. 採用活動の効率化事例
本部主導で採用戦略を切り替え、求人原稿に徹底してこだわることで、採用効率を劇的に改善した事例があります。
事例(T社):本部主導でクリック課金型Web媒体中心の採用戦略に切り替え。
施策:ペルソナ別の求人作成、媒体別UIに対応したリライトなどを実施。
結果:月25万の予算で74名の応募を獲得し、応募単価を¥22,205から¥3,321に大幅に改善しました。
11.まとめ:2026年、持続的成長のための3本柱
市場縮小と人材不足が進む中、既存顧客のLTV(顧客生涯価値)最大化が生き残りの鍵となります。以下の3つのステップを順番に実践することで、限られたリソースで最大の成果を生み出す経営体制を構築できます。
STEP 01:人材の確保と定着
採用の仕組み化
AI活用による育成効率化
STEP 02:サービスの拡充・クロスセル・アップセル
総合管理化への移行
STEP 03:顧客管理の高度化・ABC分類による重点管理
定期訪問・提案営業
12.参考資料
国土交通省「令和7年度建設投資見通し概要」・「改正建築物省エネ法‧建築基準法等に関する解説資料」
厚生労働省「一般職業紹介状況」(令和7年8月分)
総務省統計局「令和6年労働力調査」
内閣府「中長期の経済財政に関する試算」・「令和7年度内閣府年央試算について」
13.船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングがお手伝いできること
貴社の事業拡大を支援するため、船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティングでは以下のコンサルティングサービスを提供しています。
13-1. 個別コンサルティング: ビルメンテナンス会社業績アップ実行支援
外部環境調査と戦略策定(フェーズ1):ターゲット選定(業界・職種・エリア)、求職者マーケット分析、競合分析を実施し、最適な営業・求職者獲得戦略および差別化コンセプトを設計します。
各種ツールの納品(フェーズ2):法人営業支援ツール(トークスクリプト、提案資料、契約書テンプレート)や、人材募集運用ツール(求人原稿、広告運用マニュアル)、求職者マッチングツールなど、実践ツールを提供します。
実行支援(月次支援):策定した戦略を実行するための実務的支援を月1回行い、営業ロープレや求職者対応の研修、KPIマネジメントを通じて事業立ち上げをサポートします。
13-2. 集合型定期勉強会: 警備・ビルメンテナンス経営研究会
全国トップクラスのゲスト講師や専門コンサルタントによる成功ノウハウの共有。
実践企業同士のリアルな情報交換会への参加。
会員限定データベースを通じた過去の講演動画や資料の入手。
新規参入から事業拡大まで、一気通貫でサポートいたします。
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14.【船井総研ヒューマンキャピタルコンサルティング制作】「ビルメンテナンス業界時流予測レポート2026」
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